お金

借金500万円男。参加費120万円のポーカー大会に誘われるが…

二度寝の代償か、はたまた……

 目が覚めたのは16時だった。すぐ側に目覚まし時計が置いてあったにも関わらずスマホの電源を入れて時間を確認する。最近はこういう細かい所作から科学に毒されて頭が悪くなっているのを感じる。  しまった、と飛び起きた。馬券を買うのを忘れてしまっていた。飛び起きたところでレースは再び始まらない。そしてあろうことか、僕はレース結果を確認する間ずっと最悪の感情に支配されることになる。 「カレンブーケドールが勝っていませんように……」  カレンブーケドールに対しての1年間の思い出を考えると、そんな邪な気持ちは野暮にも程がある。心まで貧乏になってしまった僕は、「買っていたかもしれない5000円の馬券を撮り逃した自分の損」の心配を先にしていたのだ。  結果は着外。カレンブーケドールは4番人気だったが、結果は12着。カレンブーケドールを信じる人たちを煙に巻くような、まさに悪女のような走りぶりだった。  カレンブーケドールを買おうとしていた僕の手元にはまだ5000円が残っている。そしてギャンブル依存症の目線で言うとこれは「勝ち」にあたる。僕は心を邪悪な虫に食われたような居心地の悪さを覚えた代わりに、5000円勝ったのだった。 「最低だ、俺……」  口にして呟いてみても、口角は下がってくれない。虎の子の5000円の価値は、今や天よりも高く昇っていた。

知人からまさかの誘いが来た

 その日の夕方。久しぶりにカジノ関係の知り合いから連絡があった。 ポーカー「全部出してあげるからWSOP行かへん?」  急展開だったが、こういう誘いは稀にある。以前ボートレースに連れて行ってくれた人同様、その人もまた「チャンスをあげようか」と甘い言葉をかけてくる。だが今回の話は少し違う。WSOPだ。  WSOPとは、World Series of Pokerの略称で、文字通り世界一大きなポーカー大会だ。優勝賞金は約10億円と非常に高額で、日本のサラリーマン5人分の人生が手に入る。そして参加費は$10,000。日本円にして120万か130万円くらいだ。 「旅費も」  この時点で合計約170万円ほどの援助を受けるチャンスを得た。頭の中からカレンブーケドールの残像が消え、煌びやかなカジノの喧騒が蘇る。 「マジっすか?」  上がった口角が耳まで届きそうだった。カジノには行きたい。金は無い。返せるアテも無いし、借りるアテももう無い。タイミングとしてもちょうど良かった。 「ちょっと予定調べます!」  返信している間、今仕事が無いかどうかを確認した。ギャンブルで私生活はだらしないが、紹介のアルバイトを投げたりはできない変な性格だった。  マジで行けるかもしれない。そう思って笑っていたが、一つの重大な真実に気づいてしまう。
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あることに気がつき愕然と……
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フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。 Twitter→@slave_of_girls note→ギャンブル依存症 Youtube→賭博狂の詩

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