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日本代表のサッカーが守備偏重のワケ。勝たなければならない試合でも「リスクは負わない」

リスクを負う選択はなかったのか?

森保監督

難局を乗り切った森保監督。2月に控えるサウジ戦に向けて気の抜けない状況が続く

 リスクマネージメントを考慮したとしても、プラス遠藤航で十分な状況だった。田中が位置したスペースはボールポゼッションを得意とするチームであれば、センターバックが埋めるべきスペースだ。あの状況であれば、冨安がもう少し開いたポジショニングでそのスペースを埋め、田中は相手の最終ラインと中盤ラインの間にポジショニングすべきだったと思われる。そうすれば左サイドの攻撃に厚みを出せるし、中央寄りに位置した南野の特徴を生かせるサッカーを展開できたことだろう。  状況によってはしっかりリスクマネージメントをしたほうが良いときもあり、その判断は紙一重になる。どちらの選択が正しかったかは結果でしか示されず先に知ることはできないが、負けられない戦いというよりは勝たなければならない戦い方を強いられている今の日本代表であれば、リスクを負う選択をしてほしかったと残念に思う部分ではあった。

今の日本代表は「守備偏重」

 また、この意思決定にはチームリーダーの影響が色濃く反映されているように感じる。もちろん大きくは監督の意思が影響するが、試合中の判断はピッチ内の選手で行っていかなければならない。現状の日本代表でその意思決定に大きな影響を与えているのは、キャプテンの吉田麻也と言っても過言ではないだろう。森保監督も中盤出身とはいえ守備的な選手という過去を持ち、現キャプテンの吉田麻也ももちろん守備の選手。どちらかというと守備に重きを置いた決断になりがちになっていないかが懸念される。  もちろん他の選手の意見も聞いた上で判断していることは間違いないが、本田圭佑がチームのリーダー的な存在だった頃の決断に比べると、やや守備偏重に感じる。日本代表の歴史のなかで守備陣と攻撃陣の意見が割れるという話は何度もあった。これまではそれを話し合いで調整してきているが、森保JAPANにおいてそういったうわさは全く聞いたことがない。うまく意思統一されている証拠ともいえるが、攻撃陣には若い選手が多く意見を閉じ込めているのではないかと不安になる。意見の対立が良いこととは思わないが、偏重になることは避けたほうが良い。  話は逸れるが、ラグビーは共同キャプテンといって2人にその役割を負わせるチームがあり、前衛のポジションと後衛のポジションからそれぞれ1人ずつ選ばれることが多いという。また、ポジションごとにリーダーを立てているチームもあるくらいで、それぞれの役割が細分化され明確になっているということだろう。サッカーは明確化しづらい部分が多々あるが、試合中にチームの意思決定をする上での共同キャプテン制度は日本代表をさらなる高みへ引き上げるのではないだろうか。 <文/川原宏樹 写真提供/JFA>
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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