更新日:2022年01月05日 15:37
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結婚式の3週間後に脊髄損傷したYouTuber「障がいを使命だと思って」――2021年ベスト10

YouTubeでは「僕個人ではなく境遇に対して興味をもってもらえる」

かしわせチャンネル

画像はYouTubeのかしわせチャンネル『夫が障害者になった妻の壮絶な1日ルーティーン』より

 YouTubeは、ほかのSNSとは違い、反応が大きかったそうだ。 「TwitterやInstagramは、僕個人に興味がないとフォローにつながらない。YouTubeは、僕に興味がなくても主婦目線で、この境遇に対して興味をもってもらえるというか。介護されている人が観てくれたりするため、いろんな層にアプローチできるのが面白いなって感じました」  彼のチャンネルの視聴者は、女性が大半だという。 「僕のYouTubeチャンネルを観てくれている人って、80パーセントが女性なんです。主婦層というか、25歳くらいから50代の年齢層の方が観てくれているんです。妻の立場に自分を置き換えて観てくれている人が多いのかなって思いました」  動画のなかには、「#ワンオペ介護」や「#ワンオペ育児」というハッシュタグが付けられ、妻がかしわせさんの身の回りの世話から、育児に奮闘する姿も垣間見られる。 「妻はポートレートモデルをやっているんですが、『あの介護のYouTuberの人』って思われると、仕事の方に支障が出ちゃうとも言っていて。もしかしたら、YouTubeはそこまで出たくないのかもしれないですが」  事故に遭ってから、夫婦仲に変化はあったのだろうか。 「実は、怪我してから夫婦仲がよくなったんです。それまでは毎週喧嘩していたのですが、怪我をしてからは一度も喧嘩していないんです。夫婦の会話が増えて、喧嘩がなくなった。怪我の前は、僕は“仕事が一番大切”と考えていて、仕事のつきあいの飲み会にも週3回〜4回は行っていました。妻との時間より、仕事を優先していたんです」  かしわせさんの動画には、家族で遊園地に出かけたときのものもある。  しかしそれを観ていると、健常者と同じように楽しむためには、まだまだバリアフリーなど受け入れ側の体制が整っていないことに気づかされる。 「僕は家族で出かけるのも好きだったので、出かけるのも大変な身体になってしまったのは残念。今は家族で遊園地に行っても乗れないアトラクションが多くて、以前ほどは楽しめないんです。それでも怪我する前のことが忘れられないので、行きたくなるんですけどね」

「障がいを使命だと思って」新しい介護サービスを発案

 もともと経営者だったかしわせさんだが、今後についてうかがうと、長期間に及ぶ入院の経験から「障がいを使命だと思って」新しい介護サービスをつくる決意をしたという。 「入院していた頃、ヘルパーさんに排便とか身の回りの世話を全部やってもらっていました。ある男性のヘルパーさんが、妻にも排便の処置や洗浄のやり方をていねいに教えてくれたんです。とても優しくて、志を持っているんだなって感心したのですが、彼は口癖のように『収入が低くて、自分に自信が持てない』なんて言うんです。  こんなに人のためになることをしているにもかかわらず、仕事に誇りが持てないなんて悲しいなと思って。そんな環境を少しでも変えたい。それで、介護施設とヘルパーさんをマッチングするシェアワーキングサービスのアプリを開発しようと考えたんです」  YouTubeは、多くの人に影響を与え、介護サービスを知るきっかけにもなると考えている。 「視聴者から『勇気をもらえた』と言ってもらえることも多くて。僕と同じように障害を持っている人にも、勇気を与えられるようになりたいですね。また、次にやろうとしている介護ビジネスとの相乗効果があればいいと思っています」  脊髄損傷という大怪我を負いながらも、悲観することなく前向きな姿勢で着実に進んでいくかしわせさん。その姿を見ていると、一日一日を大事に生きようと元気をもらえるはずだ。<取材・文/池守りぜね>
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出版社やWeb媒体の編集者を経て、フリーライターに。趣味はプロレス観戦。ライブハウスに通い続けて四半世紀以上。家族で音楽フェスに行くのが幸せ。X(旧Twitter):@rizeneration

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