更新日:2021年12月17日 09:47
ライフ

おじさん構文「~カナ?」でわかる“実は繊細なおじさん心理”。日本語学者が解説

絵文字や顔文字の多用からにじみ出る対人関係の不器用さ

ナンチャッテ

おじさんが使いがちな「ナンチャッテ」

 おじさんたちが好んで使う絵文字や顔文字にも、対人関係の不器用さがにじみ出ているのだとか。 「おじさん構文でよく使われがちな“汗をかいた笑顔”の絵文字は、相手の領域に入りたいけど入れないという躊躇いの表れです。自分の存在を知ってほしい、受け入れてほしい、いじってほしいといった気持ちが含まれているのかもしれません。おじさんが使う『w(笑いを表すネット用語)』も、若者とは違う使われ方をしています。ナンチャッテと同じで、テンションを高く保って気まずさを回避しようとする役割があるんです」  松浦氏によると、おじさんが使う(笑)やwは明らかに笑う場面では使われておらず、読点と似た意味があるという。読点の代わりにwを使うことで、会話を継続させるためのきっかけ作りにしているそうだ。 「相手の反応を伺うためのポーズとしても使われているようです。おじさんはビックリマークもよく使いますが、これは打ち言葉(※携帯電話やパソコンのキーを打って書かれた言葉)でテンションを表現するためです。声でのニュアンスが伝わらないため、多用しないと動画や電話でのテンションを越えられないと感じるのでしょう。相手の気を引きたくて仕方ないんですね」

「~カナ?」は明言を避けて「失敗しても気まずくならないように」

スマホ おじさん構文でよく使われる表現のひとつに、「~カナ?」がある。「どうしているのカナ?」といった具合に使用されているが、この表現にも意味と役割があるそうだ。 「意味を曖昧にして、明言を避ける働きがあります。その後の発話に失敗しても気まずくならないように、表現を和らげているんですね。これを言語学的には‟ヘッジ表現”(※1)と言います。日常的によく使われる、『~とか』『かも』も、曖昧の機能を持つヘッジ表現です。  例えば『食事に行かないカナ?』だと、質問の形をとっていても『しませんか?』『行きましょう』と積極的な表現にはなっていない。曖昧にしているので、もしも断られても心のダメージが少ないんです」  ヘッジ表現自体には、発話内容の意味に強弱を付ける働きがある。学説上は「談話における対人関係調整のための機能」と評されるものだ。  婉曲表現やぼかしを入れることで弱めたり、逆に「いじめは‟立派な”犯罪だ」といったように強めたりする役割がある。この場合、一見「犯罪」と扱われないものに対して「立派」を使うことで、犯罪カテゴリー内での意味を強めて捉え直す働きがあるという。 「また、あえてカタカナにしているのは、変化を付けて目立つようにしているのでしょうね。先ほどのテンションを伝えるためという話と繋がります。絵文字や顔文字を乱用するのも、同じ理由だと思います。誘いたい気持ちをやわらげて伝えたいけど、絵文字などで目立ちたい。自分の気持ちに気付いてほしいという感情の表れです」 ※1 Lakoff, G.1972. “Hedges: A Study in Meaning Criteria and the Logic of Fuzzy Concepts.” CLS8:183‐228.
次のページ
実は繊細なおじさんたち
1
2
3
福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院修了。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。X(旧Twitter):@0ElectricSheep0、Instagram:@0ElectricSheep0

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ