「人間には本来、自分を認めてほしい欲求と、自分の領域に踏み込まれてほしくない欲求があります。それらを調整しながらコミュニケーションを行っているんです。この言語行動に関する配慮の意識を、“ポライトネス”(※2)と言います。おじさんたちも意識的・無意識的に欲求を調整して交流を図ろうとしていますが、若者から見ると違和感を覚えるんです」
女性と仲良くなりたい気持ちと、拒絶されて傷付きたくないという自己防衛。このバランスの歪さが若者に嫌悪感を与えるのかもしれない。
「おじさんたちは寂しいのではないのでしょうか。どんな形でもいいので、若い人と接点を持ちたいのでは? 私自身も、うまくコミュニケーションできているか、不安になることがありますよ(笑)」
おじさん構文の裏に秘められた、おじさんたちの哀愁。ホステス時代に数々のおじさんLINEを受け取り、時にはうんざりしていた筆者だが、心理を知った今なら少しは優しくなれる……かもしれない。
※2 Brown, P. and S. C. Levinson. (1987). Politeness: Some Universals in Language Usage. Cambridge: Cambridge University Press.(田中典子 監訳(2011)『ポライトネス—言語使用におけるある普遍現象』東京: 研究社.)
<取材・文/倉本菜生>