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紅白に出る意味がある歌手、ない歌手。NHK紅白歌合戦にまつわるトリビア

パフォーマンスのせいでNHKを出入り禁止になった歌手は?

東京国際フォーラム

NHKホールが改装中のため、今年の会場は東京国際フォーラムとなった。

「紅白のパフォーマンスのせいで吉川晃司は一時期、NHKを出禁になった」という説がまことしやかに流れ続けている。だが、これはウソ。都市伝説だ。1985年、当時20歳の吉川晃司(56)は白組トップバッターとして出場し、『にくまれそうなNEWフェイス』を歌った。その際、成人記念のパフォーマンスとして、ステージ上にシャンパンを撒いた。さらにギターを叩き壊すと、そこに火を付けた。  直後に登場した紅組・河合奈保子(58)は恐怖で表情を硬くしながら『デビュー』を歌った。さらに次のシブがき隊は『スシ食いねェ!』を歌い、踊ったが、ステージが酒浸しだったので、布川敏和(56)が滑ってしまい、2度コケた。  もちろんNHKは知らなかったが、吉川に対するペナルティーは一切なし。あくまで紅白を盛り上げるためだったし、視聴者からの抗議もなかったからだ。  ちなみに当時の吉川と布川は遊び仲間で大の仲良し。このため、布川が吉川に怒ることもなかった。  事情が違ったのは前出の綾小路翔が扮したDJ OZMA。紅白放送中から全裸スーツへの抗議電話が殺到し、当時のNHK会長が謝罪する羽目になってしまい、新聞に批判記事まで載ったことから、DJ OZMAも氣志團もNHKから出演依頼を受けることがなくなった。事前の打ち合わせと違ったことがNHKを硬化させたようだ。ライブで着ていた全裸スーツは紅白では見合わせることになっていた。ところが、本番では…。このスーツの出来が良かったことも禍した。一見すると、まるで裸だった。  もっとも、当時の音楽関係者らの声は「綾小路さんらしいパフォーマンスをしただけ」。観客も取材陣も大ウケだった。

「仮面ライダー事件」の真相

 中高年世代で知らぬ人はいないであろう「仮面ライダー事件」。1986年、白組司会の加山雄三(84)がトップバッターだった少年隊の『仮面舞踏会』を紹介する際、「少年隊、『仮面ライダー』!」と思い切り言い間違えた。  なぜ、加山は間違えたのか。理由は諸説ある。その1つは「近藤真彦がリハーサルの時に少年隊の衣装を見て『仮面ライダーみたいだ』と言ったのを加山が聞いていたから」。少年隊の東山紀之(55)もそう思っている。だが、筆者が加山をロングインタビューした際に聞いた真相は違った。 「台本を最終確認している時、『まるで仮面ライダーみたいな曲名だな』って冗談で思ったら、冗談のほうが口から出てしまったんだよ」  既にベテランだった加山ですら大舞台に緊張していたらしい。
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制作費1億円強の真実性
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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