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紅白歌合戦が抱える「すべての世代に共有される音楽」というムリゲー

紅白の人選に不満が噴出

番組公式ホームページより

 大みそかの『第73回NHK紅白歌合戦』の人選について「若者向けの人選すぎる」という不満の声がやまない。韓国系アーチストが5組で、ジャニーズ事務所勢が6組出る。若者を意識した人選なのは間違いない。もっとも、若者に観てもらうための人選は1970年代、80年代から行われていた。若者にも観てもらわないと、受信料の公平負担を目指すNHKは困るからだ。  紅白が若者を無視していた時代は沢田研二(74)らがいたザ・タイガースなどグループサウンズのほとんどを排除した1960年代までだ。たとえば1979年の第30回にはサザンオールスターズが初出場し、『いとしのエリー』を歌った。世良公則&ツイストは2回目の出場で『燃えろいい女』を披露した。  どちらのグループも当時の中高年以上には馴染みが深い存在とは言い難かった。サザンは「コミックバンドか」と誤解されていたくらいである。  それでも中高年以上から不満の声は上がらなかった。なぜか? 音楽が共有されている時代だったからだ。順を追って説明させていただきたい。

紅白歌合戦は懐メロ大会なのか?

 今年の紅白には1980年代歌手の大挙出演を期待する声があったようだが、それは80年代に1940年代から50年代の歌手が多く出演するのと同じことなので、考えられなかった。  1940年代から50年代の歌手は故・近江敏郎さんや故・藤山一郞さん、故・越路吹雪さんに故・淡谷のり子さんら。この面々が80年代の紅白に出ていたら、もはや『懐かしのメロディ』で紅白とは別番組になってしまった。  紅白の出場歌手の選考基準は「今年の活躍」「世論の支持」「番組企画にふさわしいか」。毎年同じである。仮に懐かしい歌手が大挙出演したら、今度は若者から不満の声が噴出するに違いない。若者側が紅白不要論を叫んだのではないか。  ただし、若者に観てもらいがたいために紅白側が売れてもいないアーチストを出したらアンフェアである。そこで今年の初出場歌手の売れ行きを簡単に確認したい。まずは紅組の5組。
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初出場歌手の選出は理にかなっているか?
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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