エンタメ

YOASOBIの仕掛け人が語る、ヒットアーティストの生み出し方

MV公開して終わりのはずが、予想以上の反響に

YOASOBI

YOASOBIのメンバー。左からボーカルのikura、コンポーザーのAyase。それぞれ個人で活動する姿を“昼の姿”、2人で共に活動する姿を“夜の姿”になぞられ、遊び心に満ちた挑戦をしていきたいという想いから「YOASOBI」と名付けられた

 無我夢中で楽曲づくりを行ってきた4人は、遂に第一弾楽曲「夜に駆ける」を完成させ、2019年11月16日にYouTubeでMVを発表した。
YOASOBI

YOASOBIの第一弾楽曲「夜に駆ける」のジャケット

 MVを公開するや、予想以上の反響で再生回数がどんどん伸びていった。  映像のクリエイティブや楽曲の完成度もさることながら、「TikTokで『夜に駆ける』をBGMにするユーザーが広めてくれた」と屋代さんは振り返る。 「『夜に駆ける』の音源を、アニメ作品やさまざまな映像と合わせてTikTokで投稿するユーザーが多かったんです。また、Twitterでも『夜に駆ける』を聴いたユーザーがシェアしてくれたり、運営側が『再生回数〇〇回達成しました。よかったらまた見にきてください』と地道に発信したりしたのが功を奏したと思います」  MVを発表してから、1ヶ月経過しても再生回数が伸び続ける状況を鑑み、急遽2019年12月15日にダウンロード・ストリーミング配信を開始。  これまでSNSでしか広まっていなかった「夜に駆ける」が、音楽ストリーミングを通して新たな層へと広まり、12月28日にはYouTubeにて100万回再生回数を突破した。  そして、翌年1月にはSpotifyのバイラルチャート(SNSで話題の曲をSpotify独自で指標化したチャート)で1位という快挙を成し遂げる。 「実はバイラルチャートについてあまり知らなかったんですよ(笑)。ただ、YOASOBIを応援してくれる多くのファンの方が聴いてくれたことで、ストリーミング配信開始からたった1ヶ月でバイラルチャートに載ることができたんだと思っています」(屋代さん)  山本さんも「徐々に広がったというよりも、急上昇したというのがしっくりきますね。朝起きたら急にバイラルチャート1位になっていて驚きました(笑)。とにかく『夜に駆ける』の勢いがあることだけは、ひしひしと感じていました」と話す。

ボーカル・ikuraの“一発撮り”動画が人気爆発のきっかけに

 その後も、第二弾楽曲となる「あの夢をなぞって」を1月にリリースし、さらに軌道に乗っていくYOASOBI。  この辺りからメディア露出も一気に増えてくる。  カウントダウンTVや朝のワイドショー、ラジオ番組への出演などを皮切りに、プロモーション活動を地道に重ねたことでファンの裾野がさらに広まっていった。  なかでも、エナジードリンク「ZONe Ver.1.0.0」とのタイアップによって生まれた楽曲「ハルジオン」を2020年5月に発表するタイミングが「ひとつのターニングポイントになっている」と屋代さんは言う。
THE FIRST TAKE

YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」用に特別アレンジした「夜に駆ける」は公開約2週間で1,000万回再生を超え、現在では約1.2億再生に迫るほどの人気動画になっている

「新曲を出すときこそ一番プロモーションに注力すべきタイミングなので、そこであとひと押しできることはないか考えていたところ、アーティストが一発撮りのパフォーマンスを披露するYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』のオファーをいただいたんです。その当時は、コロナによる緊急事態宣言下でスタジオ収録ができない状況で、ikuraの自宅で『夜に駆ける』の一発撮りをしました。  YOASOBIとしてパフォーマンス映像が公の場に出るのは初でしたが、ikuraの持つ繊細で透き通る歌声や、純真無垢な人となりを知ってもらうには絶好の機会でした。今までYOASOBIを知らなかった層へも認知が広がるきっかけになりました」
次のページ
ミリオンセラーなき今、特定のコミュニティに刺さる音楽がヒットの原点に
1
2
3
4
5
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ