エンタメ

YOASOBIの仕掛け人が語る、ヒットアーティストの生み出し方

ミリオンセラーなき今、特定のコミュニティに刺さる音楽がヒットの原点に

 以降のYOASOBIの大躍進は言わずもがなであろう。多くのメディアに露出するようになり、知名度は一気に高まっていく。  常に新しいことに挑戦し、話題に尽きないYOASOBIは社会現象をも巻き起こしている。  このようなボーカロイドやネットカルチャー発のアーティストが台頭しているのはどんな時代背景があるのだろうか。山本さんは「バンドを組まなくても、音楽を作れる環境になったのが大きな要因」だとし、次のように説明する。 「現在ではPCと編集ソフトがあれば楽曲づくりができるようになりました。また、楽器を買うよりも安価で音楽制作に取り組め、かつ自分一人で完結させられるので、ネット発のヒットアーティストが生まれているのではないでしょうか」  一方で、かつてのミリオンセラーのようなヒットは「なかなか生まれづらくなっている」と屋代さんは付け加える。 yoasobi「人々のライフスタイルが多様化し、あらゆるエンタメが登場したことで、以前のようなメガヒットを作るのは難しくなったと思います。ただ、別の見方をすれば、音楽の楽しみ方や聴かれ方も変化に富んでおり、特定のコミュニティに受け入れられる楽曲も存在しています。それぞれのフィールドでたくさん聴かれている楽曲が、何かに紐づいているような状況だと思います。  また、サービスの成長と、ヒットアーティストの登場は切っても切れない関係にあると考えています。例えば、Spotifyのような音楽ストリーミングサービスが定着したことで、2018年〜2019年にストリーミング発のヒット曲が複数生まれました。こうした先陣を切ってくれたアーティストの方がいたからこそ、ストリーミング配信でヒットアーティストが生まれる土壌が整い、YOASOBIも後に続くことができたと考えています」

生活の場が増えれば、音楽も自然と求められる

 加えて、NFTやメタバース(インターネット上に存在する仮想空間)の発展に伴って、新たな音楽シーンも創造されていくことだろう。次世代に活躍するアーティスト像は一体どのようなものなのか。  山本さんは「自由にコピーできてしまうのが当たり前の時代に、オンリーワンの価値を作れるのはとても可能性を感じる」と未来を見据える。 「NFTでアーティストの価値を作れるようになったことで、ビジネスチャンスがさらに広がると考えています。とりわけエンタメのなかでも音楽は広まりやすいものだと捉えていて、ほんの3~4分で楽しめたり片手間で聴けたりと、伝搬していく速度が非常に早いんですね。メタバースはまだ夜明け前ですが、ある程度一般化して世の中に広まってからでも、メタバースの世界で活躍するアーティストが出てくる余地は十分にあると思います」  屋代さんもメタバースの発展に期待を寄せつつ、こう意見を述べる。 「音楽はライフスタイルに入っていけるもので、生活の場が増えれば増えるほど、そこで求められる音楽が必要とされます。メタバースの世界が今後どうなるかはまだ想像ができませんが、もし生活習慣まで侵食してくるような世界になると、そこにエンタメが生まれ、自然と音楽も入ってくるでしょう。メタバースの生活圏にユーザーが違和感なく出入りするようになってくれば、その環境に即したアーティストが登場する流れも出てくるのではないでしょうか」
次のページ
才能を開花させやすい環境
1
2
3
4
5
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ