更新日:2022年01月19日 14:38
エンタメ

「コロナ→インフル連続感染」を経験した武田真治が“筋トレ習慣”を見直すまで

タトゥーでも身体に刻んでいたかもしれない

メモ

新型コロナ、インフルエンザによる自宅療養中に“発掘”された大量のメモ(撮影/菊岡俊子)

──いまはもう、メモを書いて壁に貼ったりはしていないんですよね? 武田:はい。大事なこと、覚えておきたいことをサッと書き留めたりすることはありますが。いまにして思えば、頭に浮かんできた言葉を何でも書き出して、壁に貼ったりしていたのは、結局、話し相手がいなかったからなのでしょう。  ずっと部屋にひとりでいて、延々自分と対話している感じでしたから。メモを書いていなかったら、精神を保つためにタトゥーでも身体に刻んでいたかもしれません。 ──それにしても、これだけ膨大にメモがあると、日めくりカレンダーがつくれそうです。 武田:そういう話もあったんですよ(笑)。ただ、これらのメモは、言うなれば僕の半生における“弱い部分”の種明かしみたいなもの。これを人様に見せること自体、正直かなりハードルが高かったというか……そんな、自慢気に披露できるような代物だとは思っていませんでしたから。 ──公開するのは気恥ずかしかったのですね。 武田:気恥ずかしさもありますけれど、なにより情けないじゃないですか。普通なら、酒でも飲みつつ多くの人と語り合ったりするなかで自然に身に付くような内容を、ひとりで殻に閉じこもり、10年以上も書き続けていたんですからね。情けない話です。

身体だけでなく、感情や精神の部分も伝えたい

──でも、武田さんが「情けない」というメモの言葉に救われる読者も多いと思います。 武田:であれば嬉しいですね。というか、それがこの本を出そうと、メモを公表しようと決断できたいちばんの理由ですから。  外見ですぐにわかる傷……たとえば腕に包帯でも巻いていれば「この人は腕を傷めているんだな」とすぐにわかりますよね。でも、心の傷は傍目にはわかりません。一見、普通にしていても、なんなら人より元気そうにしていても、心に深い傷を負っていることがある。自分も「楽しそうにやってるよね」なんて見られてしまうことがわりと多かったから、そのつらさがよくわかるんです。  僕なりの身体の鍛え方については、すでにいろいろな場で種明かしできたと思っています。でも、感情の部分、精神に関わる部分は、なかなか伝えられなかった。ここ数年で「気力が続かない」「気持ちを高めるコツはあるのか」「どうすれば筋トレのモチベーションを保てるのか教えてほしい」といったメンタル面の事柄を尋ねられることが増えたんですね。  そういう人たちに向けて「僕も、これだけくじけてきたんだよ」と伝えたかった。僕は別に特別強い肉体、強い魂を持って生まれてきたわけじゃない。身体だってコツコツと、愚直にトレーニングを続けてきて、ようやくいまの姿になった。精神も同じです。「僕も、こんなふうに弱い自分を『言葉』でどうにかこうにか支えながら、なんとかここまで来たんだよ」と説明したくて。  僕としては、この本を読んで「武田、だいぶヤバイな」「自分のほうがまだマシじゃないか」と読者の方に思ってもらえたら、むしろそのほうが本望です。「そうそう、あなたのほうがはるかにちゃんとしているよ」「あなたにも、まだまだチャンスがあるよ」と、少しでも背中を押せたら、こんなに幸せなことはありません。
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コロナ療養と結婚により生じた変化
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上には上がいる。中には自分しかいない。

ふがいない自分を支えてくれたのは、「言葉」と「筋トレ」だった。

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