エンタメ

“暗黒の20代”を過ごした俳優・佐藤二朗「52歳でも知らないことが山ほどある」

思いもよらない相手から多くを学べるから人生は面白い

さがす

(C) 2022『さがす』製作委員会

――日本映画は1ヶ月とか2週間とか、1週間もよく聞きます。 佐藤:日本で2ヶ月っていうとね、大作ですよ。でもそんな予算はもちろん全然ないわけです。じゃあ、どうするかと。スタッフを少なくしたんです。各部署ひとりだし、照明はいないし、持道具(俳優が身につける衣装以外の小道具すべてを用意する人)もいないし。非常にミニマムにした。偉いなと思ったのは、「自分はこういうやり方でやりたい」と、ちゃんと自分でプロデューサーを説得して、そういう座組を自分で作り上げたんです。そこにまず非常に敬意を表したいし、テイクを重ねるというのは、俳優の可能性を諦めないことにも繋がるんですよね。そうした意味でも非常に信頼できる監督だと思いました。 ――ポン・ジュノ監督の話ではありませんが、本作のお芝居も何度もやるのが大変そうなシーンばかりです。 佐藤:ものすごくキツイですよ。泣き叫ぶようなシーンも何回もやるから。そういうシーンは10回も演じるのは無理よと言ったら、「大丈夫です。それは分かってます。5回までです」って、5回はやるんかい!と。実際5回はやってましたからね。他のところは10回とかそれ以上でした。でも非常に勉強になりました。まさか20年前に山猿みたいだったやつから、こんなにたくさん学んで影響を受けるとは思わなかったですね。だからこそ、やっぱり人生って面白いなと思います。

どの言葉を覚えて自分のものにするかも、その人の実力

さがす

(C) 2022『さがす』製作委員会

――片山監督とのエピソードもそうですが、佐藤さんは過去の出会った人のことをかなり覚えているのでしょうか? 佐藤:自分では分からないですけど、昔のことを本当によく覚えてるとはよく言われますね。僕が続けてる演劇ユニット「ちからわざ」で演出をやっている堤泰之が、ある雑誌で僕の特集があったときに、インタビューで「佐藤二朗の一番のすごさは、いろんな人の話をいつまでも覚えていて、必要なことを吸収して常に進化していくところだ」と答えてました。僕が言ったんじゃないですからね。 ――どんな相手に接するにもフラットなのかもしれませんね。 佐藤:どの人のどの言葉を覚えて自分のものにするかというのも、その人のセンスとか実力かなとは思いますね。僕は人の話を聞くのがすごい好きです。たとえば映画の感想を言い合うのも好きです。自分とは全然違う感想のほうがむしろ楽しいですね。「ええ!そんな風に観たの?」って。
次のページ
僕は「暗黒の20代」を過ごした
1
2
3
4
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi

記事一覧へ

【公開情報】
さがす』はテアトル新宿ほかにて全国公開中
(C) 2022『さがす』製作委員会
おすすめ記事
ハッシュタグ