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オミクロン株、弱毒でも楽観してはいけない深刻理由。空港検疫の元トップが警告する

まだデルタ株の感染者もいる

田中:あと、気になっているのは、まだデルタ株の感染者がいるということです。完全にオミクロン株に置き換わっているわけではない。デルタ株の毒性は変わっていないでしょうし、オミクロン株の感染拡大の中で、デルタ株の隠れた集団発生が起きてもそれが見えにくくなります。 ――決して、楽観できる状態ではないんですね。 田中:私も楽観論にすがりたいですし、収束することを望んではいます。が、危機管理は常にベストシナリオと同時にワーストシナリオを想定して対策にあたるべきです。我々と新型コロナウイルスとつきあいは2年にもなりますが、まだ2年。すべてがわかっているわけではなく、コロナウイルスがどういう“ポテンシャル“を持っているのか、まだ見極められない。新たな変異株が登場する可能性だってゼロとは言い切れません。

一般の人は、これまで通りの対策を続けること

――一般の人はどうしたらいいでしょうか。 田中:これまで通りの感染症対策を続けることです。オミクロン株の潜伏期間の短さは、疫学調査をする上では厄介な特性ですが、一方で、きちんと対策をすれば、効果は早く出るということでもありますから。 ――それは朗報です。 田中:ただ、感染症ですから、例えば100人いて90人が対策をして感染拡大防止に協力してくれても、10人が対応してくれないと意味がありません。「重症化しない」「たいしたことない」かもしれないけれど、その先にいる人が重症化しないとは限りませんから。
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役所のコロナ対策アプリはなぜダメなのか
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元厚生労働省成田空港検疫所長。静岡市保健所長(2021年10月より)。 1987年、山口大学医学部卒業。1991年、山口大学大学院医学研究科修了、医学博士。山口大学医学部助手、厚生省健康政策局医事課試験免許室試験専門官などを経て、2007年、JAXA有人宇宙技術部宇宙医学生物学研究室主幹開発員。2010年、文部科学省研究振興局ライフサイエンス課ゲノム研究企画調整官。2011年、内閣府参事官(ライフイノベーション担当)。2012年、厚生労働省神戸検疫所長。以降、同・東京検疫所長、同・北海道厚生局長を経て、2018年、同・成田空港検疫所長就任。著書に『子供に教えるためのプログラミング入門』、『算数でわかるPythonプログラミング』、『成田空港検疫で何が起きていたのか ─新型コロナ水際対策の功罪』がある。

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