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オミクロン株、弱毒でも楽観してはいけない深刻理由。空港検疫の元トップが警告する

デジタル庁のシステムも誤入力だらけ

――そういえば、デジタル庁の「VRS(ワクチン接種記録システム)」も、誤入力が多いと報道されていました。 田中:VRSはたとえば、1回目に打った日と2回目に打った日が逆でも入力できてしまいます。単純なヒューマンエラーならその場でシステムがチェックできるのが、後で人力で探して修正するのは大変なんです。しかし、仕様書に書いてなければ、システムに組み込む必要はない。 加えて、公的機関の場合、仕様書に書いてある通りのものを作ってきたら、受け取らざるを得ない。「誤入力にエラーが出ない」と文句を言っても「仕様書に書いてありませんでしたから」と業者に言われたらそれまでなんです。 ――業者も「こうしたほうがいいですよ」って、言えばいいのに。 田中:開発業者も商売ですし、ギリギリの金額で入札してますからね。担当する役人がある程度、知識がないときちんとした仕様書を出せない。プログラミングが必修化され、簡単でもいいので出入力のプログラムを作った経験のある人材が増えればこの先変わっていくと思いますが、役所のデジタルデバイドの問題は大きいですね。

コロナは大きな宿題を残した

――それもまた、ポストコロナの課題なんですね。 田中:本当に100年に一度のパンデミックが社会制度の不備をあぶり出しました。コロナは大きな宿題を残しました。ただ、改善すべき課題が明らかになっても、まず、“できること”をやろうとしてしまう。そうではなく “やるべきこと”をやらなくてはいけない。感染症に強い社会を作るためには、発想の原点を変えていくべきだと思います。 <田中一成   構成/鈴木靖子>
元厚生労働省成田空港検疫所長。静岡市保健所長(2021年10月より)。 1987年、山口大学医学部卒業。1991年、山口大学大学院医学研究科修了、医学博士。山口大学医学部助手、厚生省健康政策局医事課試験免許室試験専門官などを経て、2007年、JAXA有人宇宙技術部宇宙医学生物学研究室主幹開発員。2010年、文部科学省研究振興局ライフサイエンス課ゲノム研究企画調整官。2011年、内閣府参事官(ライフイノベーション担当)。2012年、厚生労働省神戸検疫所長。以降、同・東京検疫所長、同・北海道厚生局長を経て、2018年、同・成田空港検疫所長就任。著書に『子供に教えるためのプログラミング入門』、『算数でわかるPythonプログラミング』、『成田空港検疫で何が起きていたのか ─新型コロナ水際対策の功罪』がある。
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