更新日:2022年02月28日 09:09
スポーツ

ゴルファーの8割がスライスに悩む根本的な理由/ティーチングプロ・三觜喜一

ゴルフクラブは”偏重心”の特殊な道具

 ゴルフの起源には諸説ありますが、発祥地とされるスコットランドで、羊飼いが棒で石を転がし、穴に入れて遊んでいたのが始まりと言われています。棒で石ころを打つだけなら、そんなに難しいことではないし、複雑に考える必要はありませんでした。それはなぜかというと、棒は握っている部分の延長線上に重心、つまり石を打つ芯が存在するからです。冒頭に挙げた野球のバットやテニスのラケットもそう。グリップの延長線上にボールを打つ芯、あるいは面があります。野球やテニスが難しいのは自分に向かって動いてくるボールを打たなくてはいけないからで、ゴルフのように止まっているボールを打つのであれば、芯に当てて真っすぐ飛ばすことは、さほど難しくはないでしょう。  では、ゴルフクラブはどうでしょうか。クラブはシャフトの先端に鉤状のヘッドがついているため、グリップの延長線上にボールを打つ芯が存在しません。加えて、ヘッドには厚みがあり、ヘッド単体の重心位置もボールを当てるフェース面より後方にあります。このヘッドの重心位置とグリップを直線で結んだ位置、いわば“シャフトの外”にゴルフクラブの重心はあるわけです。 ゴルフ これがゴルフを難しくしています。クラブとは、グリップの延長線上から重心位置がズレた位置にある“偏重心”の構造を持った、極めて特殊な道具なのです。なのに、これを説明したトリセツがないんですよ。おかしいですよね。球技に用いる道具で偏重心となっているのは、ゴルフクラブかホッケーのスティックくらいでしょう。

初心者の大敵・スライスも偏重心だから発生する

 さて、ゴルフ初心者のほとんどが、ボールが右に曲がる“スライス”に悩まされます。昔からゴルファーの80%は右曲がりのスライサーだと言われるほど。その理由も“偏重心”というゴルフクラブの特性によるものです。  フェース面を目標に対してスクエアに構えてスイングしても、重心がシャフトよりも右の空間にあるため、スイングを開始するとヘッドが遠心力によって勝手に右へと回転して、常にフェースが開く方向へと動こうとします。そうした特性を知らないまま、バットやラケットと同じ感覚で振れば、インパクトで勝手にフェースが開いてしまい、右方向へのミスや、スライスが出てしまうのです。  こうしたスライスの悩みに直面したとき、初心者は「フェースを開かないようにしなきゃ」と考えがちですが、これもナンセンス。フェースが開こうとする遠心力に逆らうために必要な握力は500㎏とも言われ、人間には偏重心からくるフェースの動きを力ずくで制御することは不可能です。
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ゴルフとはクラブの重心を管理するスポーツ
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みつはしよしかず●’74年、神奈川県生まれ。日本プロゴルフ協会認定ティーチングプロA級。ジュニア育成、ツアープロコーチとしても活躍。YouTubeの「三觜喜一MITSUHASHI TV」は登録者数41万人超

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【過去記事を参照 Lesson 1~41、82~】⇒日刊SPA!
【過去記事を参照 Lesson 42~81】⇒bizSPA!

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