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「鬼滅の刃・刀鍛冶の里編」アニメ化決定。遊郭編の印象に残った場面をおさらい

甘露寺蜜璃が初めて刀を振る刀鍛冶の里編

植:私は(甘露寺)蜜璃ちゃんが刀を振るシーンがやっと出てくるところです。刀鍛冶編が始まるまでずっと「恋柱って何?」って批判が蜜璃ちゃんに集まっていて。あれだけ強い柱が9人いて、女性剣士は二人しかいなくて、しかも最初のシーンでヌードで出てくる。 これはどうするんだろうと思っていたんですけど、彼女が刀を振るっているシーンを見ていると生半可な気持ちで剣士になったんじゃないんだということがすごくよくわかります。抜刀したときに「甘露寺蜜璃の愛刀は極めて薄く 柔い」(123話)というシーンがあるんですけど、あのときの蜜璃ちゃんの表情で、この子は何千回、何万回と振ってきたんだなというのがわかるのがすごく好きです。 二つ目は柱である蜜璃ちゃんと無一郎が二人出てくる。ということは共闘するのかなと思わせておいて、柱は一緒に戦わないんですよね。いかに柱一人ひとりの力が強いのかというのがハッキリわかるのも見どころかなと思っています。

『鬼滅』のキャラはあまり愛情をキャッチボールしない

鈴村:植さんが先ほどおっしゃった、愛による救済の話はやはりとても重要ですね。愛といっても、人間愛、博愛の精神といったもの。炭治郎が一貫して鬼を憎むのではなく、人間としての存在を見いだす眼差し、それが鬼そのものに対する救済になっているともいえる。 植:『鬼滅』のキャラクターはあまり愛情をキャッチボールしないんですよね。みんながそれぞれ自分の愛を相手に伝えるんですけど、その場で答えを求めず、死んでからわかることも多い。それが無償の愛の形を表現しているのかもしれません。決してハッピーエンドではなく、死が二人を最終的に繫ぐという愛、そして救いの形を描いているのかもしれません。 【鈴村裕輔氏】 名城大学外国語学部准教授、博士(学術)。野球史研究、比較思想、文化研究など多岐にわたる研究を続ける。『鬼滅の刃』における多様性の構造など、『鬼滅』に関する論考も複数発表している 取材/山脇麻生
1977年和歌山県新宮市生まれ。神戸大学国際文化学研究推進センター協力研究員。大阪市立大学文学部国語・国文学科卒。大阪市立大学大学院文学研究科前期博士課程修了。神戸大学大学院国際文化学研究科後期博士課程修了。博士(学術)。専門は伝承文学、神話学、ドイツ民俗学。著書に『「ドイツ伝説集」のコスモロジー -配列・エレメント・モティーフ-』(鳥影社)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)、『「神話」を近現代に問う』(勉誠出版)など

鬼滅夜話

キャラクター論で読み解く『鬼滅の刃』


ニュースサイト「AERAdot.」の人気連載・『鬼滅の刃』のキャラクター分析記事を大幅に加筆した『鬼滅夜話』待望の書。2020年12月から始まった神戸大学研究員の植朗子氏による分析記事は、配信されるたびにSNSで話題となり鬼滅ファンからも認知されているようになった人気連載。SNSでの「単行本で読みたい」という声にお応えし、大幅加筆&キャラクターも追加! 炭治郎や禰豆子、鬼殺隊の「柱」メンバー、鬼たちのセリフや行動の裏にあるものとは!? 全352ページで読み応えもたっぷり。鬼滅ファン必携の書!
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