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「鬼滅の刃・刀鍛冶の里編」アニメ化決定。遊郭編の印象に残った場面をおさらい

命がけで人を信じることで救済がもたらされる物語

鬼滅の刃

『鬼滅の刃』9巻(ジャンプコミックス)より

植:そうやって自分の存在、生き方を誰かに認めてもらうのが一つの救済の提示なのかなって思います。作中には、炭治郎が「信じてもらえた」と言うシーンが要所要所にありますよね。今回の遊郭編ですと、炭治郎は宇髄天元から「感謝する」(195話)と言われるんですけど、自分の頑張ったことを誰かに認めてもらうというところに救済があるんじゃないかと思うんです。その結論が合っているのかどうかはまだわからないのですが。 鈴村:しかも信じるといっても中途半端な信じ方ではなく、全てを捧げて信じるというところと結びつく。自分自身の全てを捧げる強い意志の表れですよね。決して「信じてよ大丈夫だから」というような軽いものではない。それこそ冨岡義勇と鱗滝左近次も、禰豆子が人を襲った場合は「腹を切ってお詫び致します」(46話)と言っていますから、そういうことからも信じるという言葉が持つ意味は大きいことがわかります。 植:ちょうど遊郭編のクライマックスで妓夫太郎が堕姫に言ってもらうんですよね。「何回生まれ変わってもアタシはお兄ちゃんの妹になる絶対に!!」と。ずっと妹のことを幸せにできてなかったんじゃないかという後悔があったんだけど、最終的には妹が認めてくれたことによって、これでいいんだと思えて、今までの罪は地獄で償おうと納得する。地獄に行くのは本来救済ではないはずなんですけど、彼らにとってはそれが一つの結論なのかなと思います。 鈴村:そのお話を伺ってから改めて遊郭編のクライマックスを観ると、そうなんだと胸にストンと落ちてくる気がします。

アニメ化決定!「刀鍛冶の里編」の見どころ

――遊郭編はクライマックスということで、その次の刀鍛冶編で楽しみな場面を教えてください。 鈴村:一つは剣の天才・時透無一郎の存在ですね。普段は何があっても動じない雰囲気だったのが、最後に感情を露わにする。そこに彼の秘めている強さ、芯の太さが見えてくるなと思いました。 もうひとつは、刀鍛冶編に含まれるかどうかですけど、柱稽古の中で登場する訓練用のからくり人形・縁壱零式。連載で読んでいたときは「そうなんだね、ふーん」という感じだったんですけど、それが次の無限城編に深く結びついているということが後になってわかってくるという伏線の張り巡らせ方に唸りました。
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甘露寺蜜璃が初めて刀を振る刀鍛冶の里編
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1977年和歌山県新宮市生まれ。神戸大学国際文化学研究推進センター協力研究員。大阪市立大学文学部国語・国文学科卒。大阪市立大学大学院文学研究科前期博士課程修了。神戸大学大学院国際文化学研究科後期博士課程修了。博士(学術)。専門は伝承文学、神話学、ドイツ民俗学。著書に『「ドイツ伝説集」のコスモロジー -配列・エレメント・モティーフ-』(鳥影社)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)、『「神話」を近現代に問う』(勉誠出版)など

鬼滅夜話

キャラクター論で読み解く『鬼滅の刃』


ニュースサイト「AERAdot.」の人気連載・『鬼滅の刃』のキャラクター分析記事を大幅に加筆した『鬼滅夜話』待望の書。2020年12月から始まった神戸大学研究員の植朗子氏による分析記事は、配信されるたびにSNSで話題となり鬼滅ファンからも認知されているようになった人気連載。SNSでの「単行本で読みたい」という声にお応えし、大幅加筆&キャラクターも追加! 炭治郎や禰豆子、鬼殺隊の「柱」メンバー、鬼たちのセリフや行動の裏にあるものとは!? 全352ページで読み応えもたっぷり。鬼滅ファン必携の書!

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