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コロナ禍の“特殊清掃現場”の実態「無意識に生活環境が悪化して…」清掃業スタッフが語る

自宅にこもると気持ちも沈んでくる

 現状では、実際の統計から孤独死の増加とコロナ禍の因果関係を導くのは難しい。ただ、人びとに「新しい生活様式」が浸透したことで、今後の変化が生まれる可能性について鈴木さんは言及する。 「コロナ禍ではフードデリバリーの需要も高まり、外出せず人との交流も少なくなりました。職場もリモートワーク化して買い物に出る必要もないとなると、室内の閉塞的な空間にこもりがちになる。新しい刺激がないと気持ちも沈んでいきますし、身の回りを改善しようとする意識も薄れていってしまいます。依頼者の方から実際に聞いたのは『外へ出なくなったし、必要なものは通販で購入する生活に慣れると面倒くさくなってくる』という声でした。  参考までに東京23区の統計(東京二十三区清掃一部事務組合・2021年12月27日更新)を見ると、コロナ禍以降の令和3(2021)年度では回収されたゴミの量が1705.7トンでした。コロナ禍となる以前の令和元(2019)年度で1864.2トンでしたので、やや減少傾向にあります。回収されたゴミの量が減少傾向であるにも関わらず、家庭でのゴミが出やすいとなると自宅に溜まっていると考えるのが自然。ゴミを放置すれば健康状態が悪化する可能性もありますし、そこから病気になり孤独死を迎えてしまう危険性もおおいに考えられます」

コロナ禍では“ゴミ屋敷”の依頼も多い

ゴミ屋敷化してしまい、清掃の依頼があった部屋

ゴミ屋敷化してしまい、清掃の依頼があった部屋

 孤独死の前兆として、自宅の“ゴミ屋敷化”も懸念される。コロナ禍での生活様式の変化が、その流れを加速させている可能性もあるという。 「コロナ禍の依頼ではAmazonのダンボールや食べ終えたフードデリバリーの容器が、室内で散乱している“汚部屋”状態のケースも顕著でした。依頼されるのはリモートワークをしている方や、配信者の方も多いです。生活時間が不規則になりやすい介護・医療関係のお仕事に就いている方などさまざまです。配信者の方でいえば、普段カメラに映っている範囲内は整理整頓されていて、周囲はゴミが散らかっている状態でした。  こうした事例は、誰にでも起こりうるものだと考えています。コロナ禍での通販や食品デリバリーの浸透により他人とふれあわず、一人っきりで生活するようになった人たちも多くなったと思いますし、いずれ自分もそうなる可能性があると心に留めておいてほしいです」
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「家の中は心の鏡」わずかな手間を惜しまない
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