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なぜ綾瀬はるかは視聴率を稼ぐのか。稼げない女優との違いと世間の誤解

低視聴率女王という名の濡れ衣

 一方、「低視聴率女優」という不名誉なレッテルを貼られてしまう主演女優もいる。だが、その大半は濡れ衣。そもそも現在のドラマ界で、視聴率を獲りにくい女優が主演を張るのは不可能に近い。  理由は単純明快。視聴率が獲れそうにない女優の主演ドラマが企画されたら、スポンサーがキャスティング案を蹴る。不人気が見込まれるドラマにカネを投じるような奇特なスポンサーは存在しない。  だから男女とも実績のある役者ばかりが主演を務める仕組みになっている。低視聴率が怖いから、新顔はなかなか主演に据えられない。  4月期ドラマの新作はプライム帯(午後7時~同11時)に14本もある。けれど初主演は日本テレビ『悪女(わる)〜働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?〜』(13日スタート、初回は水曜午後9時54分)の今田美桜(25)だけである。 「それでも低視聴率ドラマは存在する」という声も上がるだろう。確かにそう。ただし、それは世帯(個人)視聴率の話。  世帯視聴率は8%(個人4%)程度だった1月期連ドラの日本テレビ『ムチャブリ!わたしが社長になるなんて』は録画視聴分も合わせた総合世帯視聴率だと約14%に跳ね上がる。フジテレビの同『ゴシップ#彼女が知りたい本当の○○』も世帯視聴率は6%(個人3%)台だったが、総合世帯視聴率は12%台。やはり世帯視聴率が9%(個人5%)程度だったTBSの同『ファイトソング』は総合世帯視聴率だと15%近くになる。十分に見られていたのだ。

若い世代は世帯(個人)視聴率に貢献しない

 近年のドラマの大半はメインターゲットが若い視聴者。すると、若い人は自分の生活スタイルに合わせてドラマを見たいから、どうしても録画組が増えてしまう。だから世帯(個人)視聴率は上げにくい。その傾向は平日が顕著だ。  また『ムチャブリ!』『ゴシップ』『ファイトソング』は世帯(個人)視聴率ではいずれもテレビ朝日『科捜研の女』に勝てなかったものの、コア視聴率では3作品とも勝っている。視聴率は世帯(個人)ばかりではない。綾瀬の場合、若者ウケが良いが、年配層の支持も厚い。そんな強みもあり、前出『天国と地獄』はリアルタイムでも録画でもよく見られた。最終回の総合世帯視聴率は29.4%にも達した。  やはり綾瀬は視聴率を獲りやすい女優なのである。 <文/高堀冬彦>
放送コラムニスト/ジャーナリスト 放送批評懇談会出版編集委員。1964年生まれ。スポーツニッポン新聞東京本社での文化社会部記者、専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」での記者、編集次長などを経て2019年に独立
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