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マリン初勝利を挙げた佐々木朗希が胸に秘める「今ある毎日の大切さと、周囲への感謝」

津波で消えていった新品のグラブ

 子供心ながら忘れられない思い出がある。震災直前。両親に新しいグラブを買ってもらった。お気に入りのニューグラブだった。だから型をしっかりと作るまでは使用しないと決めた。入念に揉みほぐし、何度も何度もボールでポンポンと叩き、数日してようやく納得の柔らかさになった。  自宅に戻ってからこの新品のグラブでキャッチボールをすることを楽しみに学校に向かった。新しいグラブのキャッチボールデビューの瞬間を想像するだけでワクワクした。しかし、当たり前のように訪れるはずだった放課後の楽しい時間が来ることはなかった。その日、自宅は津波で全壊し、さまざまな大切なものと一緒にグラブも消えていった。 「今あることが当たり前だと思わないでほしい」  佐々木朗希は震災に際して必ずこのメッセージを発信し続けている。それは小学校3年生の自身が味わった悲しい経験の数々が原点にある。そして今後もプロ野球選手という注目され影響の大きい立場を自覚し、子供たちを中心に広く伝えていきたいと考えている。

球速、奪三振etc.さまざまな記録更新の期待が高まっている

 3年目の今年。マリーンズファンだけではなく日本中のプロ野球ファンの注目を集める存在になりつつある。昨年から現在まで25イニング連続奪三振の記録を継続中。2試合連続二桁奪三振で、3試合連続となればマリーンズでは1995年の伊良部秀輝以来となる。  現在、通算91奪三振で通算100三振も間近。奪三振の球団記録は16個(79年6月8日近鉄バファローズ戦での村田兆治氏)で自己最多はここまで13個。もちろん、ここまでMAX164kmのストレート最速を更新する期待も高まる。さまざまな記録更新とともに、誰よりも注目を集める佐々木朗希。  次回先発は4月10日、ZOZOマリンスタジアムでのバファローズ戦(14時試合開始)が予定されている。ファンの期待に応え、子供たちに夢を与え大事なメッセージを発信し続ける存在として。大きな責任と自覚を胸に背番号「17」は3年目、覚醒のマウンドに上がる。 文・写真/千葉ロッテマリーンズ取材班
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千葉魂vol.8 マリーンズ挑戦の日々2021

優勝を目指し、決して諦めない選手たちの素顔

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