お金

職業選択は投資と同じ。退職後に司法試験を目指すことの意味を問う

面接で遭遇した、某国立大学を卒業した同い年の男性

人生ゲーム

写真はイメージです

さて、そうやって実際に転職し、リスクを受け入れてしまうと、仕事は楽しくなります。毎月いろいろな数字上の目標が課されますが、それはまるでゲームのような感覚で攻略する感じになっていきます。元々、ボードゲーム時代からシミュレーションゲームが好きで、大学弁論部では後輩を束ねていろいろなプロジェクトをやっていた私です。水を得た魚のようになりました。 おかげで、二十代で取締役に就任し、晴れて雇われ経営者になれたのでした。ちょうどその頃、私に衝撃を与えたある出会いがあります。その時のエピソードをご紹介します。 中小企業の役員はマルチプレーヤーです。講師の研修に駆り出されることもあれば、保護者向けの説明会もこなすし、労基の調査が入れば対応もします。私はある日、中途採用の面接に駆り出されました。その時、面接したのは同い年のとても偏差値の高い某国立大学を卒業された方でした。 彼は一浪されていて文字通り私と同じ年に社会に出ていました。しかも、就職先も今はメガバンクと呼ばれているとある都市銀行で、世が世なら同業者だった可能性がありました。彼はその銀行に勤めるも、私と同じくすぐにこの仕事は合わないと感じたそうです。

無責任なアドバイスに従い、3年を待つ

ところが、その先の展開が私と違いました。私は誰にも相談せず、すぐに退職することを決意しましたが、彼は友達や先輩などに相談してしまったんです。彼らがなんと言うか想像できますよね? 「早まったことを考えずに3年は様子を見たほうがいいよ。転職するにしても、すぐに辞めたってことじゃ不利だから……」という絵に描いたような無責任なアドバイスを受けてしまったのです。 彼はそのアドバイスに従い、3年勤めましたが、結局3年後には退職届を出しました。3年も時間をかけてこの職場に向いていないということを念入りに確認してしまったわけです。 しかも、この後の展開が最悪です。さっさと転職すればいいのに何を血迷ったか司法試験を目指して勉強を始めてしまいました。いくら偏差値が高い某国立大学卒とはいえ、元々司法試験に向いていなかったから民間企業に就職したわけじゃないですか。それなのに、銀行を辞めた自分を正当化するため、弁護士になろうと思ったんですね。それが、大きなリスクであることも知らず。
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なぜ、退職後、人は司法試験を目指してしまうのか
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1969年、東京都生まれ。経済評論家。中央大学法学部法律学科卒業。在学中は創立1901年の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年、経済評論家・勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任(現在は代表取締役)。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一名誉教授に師事し、薫陶を受ける。リフレ派の論客として、著書多数。テレビ、ラジオなどで活躍中

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