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職業選択は投資と同じ。退職後に司法試験を目指すことの意味を問う

なぜ、退職後、人は司法試験を目指してしまうのか

六法全書でも、その気持ちが痛いほど分かったんです。何を隠そう私も銀行を辞めるとき、政治家になると大言壮語していましたから。これは高校生の頃から続く私の癖でした。部活を辞めたかっただけなのにアメリカに留学すると言って本当に行ってしまったり……。 だから、銀行を辞めた後、政治家になろうとして政治の道に少しだけ進んだことがあったんです。某地方議員の秘書みたいなことをして、政治のキャリアを積み上げられないかと模索しました。しかし、その世界は銀行以上に向いていなかった。忖度とか気遣いとか私には向いていないじゃないですか。地元を回って人の話を聞くなんて無理でした。絶対向いていない。私はほんの数か月のチャレンジでそれを見抜き、すぐに方向転換しました。 ところが、面接に来た彼はなんと3年もの間、司法試験を頑張ってしまったのです!! もちろん、合格はしませんでしたよ。合格していたら私が役員をやっている塾の面接になんか来ないですから。

面接する人とされる人の分かれ道

ご本人には大変申し訳ないのですが、私としては彼の人生を他山の石として勉強させてもらいました。 大学を卒業した時点では、おそらく彼のほうが私より上。終身雇用のお堅い銀行では、偏差値の高い大学を出ているほうが出世に有利ですから。 しかし、卒業から、わずか6、7年ほどの間に面接する人とされる人に運命が分かれてしまった。しかも、面接している私は曲がりなりにも取締役で経営者の端くれ、面接される彼はニートみたいなもんですよ。こんなに決定的な差がついてしまうんですか! 人生って残酷すぎる!! 実は彼と同じ大学を卒業し、某中央官庁に就職した弁論部の後輩が似たようなことをしていたのを思い出しました。その後輩は役所のパワハラで心を病んで退職したあと、彼と同じように司法試験の勉強を始めたのです。当時、私はその後輩に「そんなことしてないでなるべく早く働いたほうがいいよ」とアドバイスしました。 結局、その後輩は1年ぐらい勉強した後、方向転換して某IT企業に就職しました。そこでのびのび活躍する姿を見て、やっぱり仕事があるって大事なことだなと思いました。本書を執筆するにあたり、改めて当時なぜ司法試験に走ったのかその後輩に尋ねてみました。彼の返事は「司法試験は完全にプライドの穴埋めに過ぎないですよ。今思えば」とのことでした。なるほど。深い。そしてこいつ成長したなって思いました。
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職業の選択は投資に近い。リスクとリターンを考えよう
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1969年、東京都生まれ。経済評論家。中央大学法学部法律学科卒業。在学中は創立1901年の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年、経済評論家・勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任(現在は代表取締役)。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一名誉教授に師事し、薫陶を受ける。リフレ派の論客として、著書多数。テレビ、ラジオなどで活躍中

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