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門田博光、江夏豊etc.昭和プロ野球のサムライたちは「取材時も意識的に圧をかけてくる」

レジェンドの生き様に見る、今を生き抜くヒント

――今から40~50年も前のプロ野球界が、とても精緻に描かれているのが印象的な一冊でした。映像資料やデータが容易に手に入るものではなかったと思います。どのように取材を重ねられたのですか? 松永:時代考証の整合性をきちんと検証することは当たり前ですが、まず有益な仮説を立てられるかどうかが取材する前のポイントでした。レジェンドたちは、こっちがどれだけ野球を知っているか、いわばどれだけ勉強してきているかを図ります。向こうの予測を上回る準備をしないと太刀打ちできないので、取材準備に相当時間がかかりました。  執筆に関しては、いかに視点が散漫にならずに臨場感を出しながら書くことを念頭におきました。そして、なるべく五感を刺激するような心情描写をちりばめたつもりです。その時代に生きていなくても、読んで想像してもらえることが一番だと思っています。  あと、これは余談ですが……プロ野球界のマスコミに属する人々のコミュニティは“野球村”とも呼ばれ、取材する際にもしがらみやしきたりがあります。社会通念的な最低限のマナーと仁義だけは切って取材をしましたが……それでも「一言声をかけるべきだろ」「俺のをパクったやろ」とお叱りを受けた大先輩方がいました。正直、知らんがなです(笑)。 ――どんな読者に読んでほしいか。 松永:この本に登場する5人を描くにあたり、「組織との衝突」も大きなテーマとなっています。会社員であっても、多かれ少なかれ組織への不満を抱えているでしょう。ですが、保身や食い扶持を維持するために「長い物には巻かれておけ」と己を押し殺すのが普通のはず。ですが、今回取材した5人はときに組織に抗い、己の信念を貫いたという点で共通しています。そうやって“己を貫き通す生き様”に、何かと生きづらい時代を生き抜く勇気や知恵を感じ取ってもらえたらと思っています。
1968年生まれ。岐阜県出身。琉球大学卒。出版社勤務を経て2009年8月より沖縄在住。最新刊は『92歳、広岡達朗の正体』。著書に『確執と信念 スジを通した男たち』(扶桑社)、『第二の人生で勝ち組になる 前職:プロ野球選手』(KADOKAWA)、『まかちょーけ 興南 甲子園優勝春夏連覇のその後』、『偏差値70の甲子園 ―僕たちは文武両道で東大を目指す―』、映画化にもなった『沖縄を変えた男 栽弘義 ―高校野球に捧げた生涯』、『偏差値70からの甲子園 ―僕たちは野球も学業も頂点を目指す―』、(ともに集英社文庫)、『善と悪 江夏豊ラストメッセージ』、『最後の黄金世代 遠藤保仁』、『史上最速の甲子園 創志学園野球部の奇跡』『沖縄のおさんぽ』(ともにKADOKAWA)、『マウンドに散った天才投手』(講談社+α文庫)、『永遠の一球 ―甲子園優勝投手のその後―』(河出書房新社)などがある。

92歳、広岡達朗の正体92歳、広岡達朗の正体

嫌われた“球界の最長老”が遺したかったものとは――。


確執と信念 スジを通した男たち確執と信念 スジを通した男たち

昭和のプロ野球界を彩った男たちの“信念”と“生き様”を追った渾身の1冊

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作品概要・収録内容
確執と信念 スジを通した男たち


1章:門田博光 奇才と孤独 〜稀代の豪打者が抱える“19番”への恩讐〜
2章:田尾安志 衝突とプライド 〜天才打者が選んだ「新設球団 初代監督」の道〜
3章:広岡達朗 反骨と改革 〜プロ野球界に68年身を置く男の矜持〜
4章:谷沢健一 派閥と人徳 〜“ヤザワ”と中日ドラゴンズ〜
5章:江夏豊 義理と器量 〜裏切られ続けた史上最高左腕


【著者プロフィール】
松永多佳倫(まつながたかりん)
1968年生まれ。岐阜県出身。琉球大学卒。出版社勤務を経て2009年8月より沖縄在住。著書に、『まかちょーけ 興南甲子園春夏連覇のその後』、『偏差値70の甲子園-僕たちは文武両道で東大を目指す-』、映画にもなった『沖縄を変えた男―栽弘義 高校野球に捧げた生涯』、『偏差値70からの甲子園-僕たちは野球も学業も頂点を目指す-』(以上、集英社文庫)、『善と悪 江夏豊のラストメッセージ』、『最後の黄金世代 遠藤保仁』、『史上最速の甲子園 創志学園野球部の奇跡』(以上、KADOKAWA)、『マウンドに散った天才投手』(講談社+α文庫)、『日本で最も暑い夏 半世紀の時を超え、二松学舎悲願の甲子園へ』(竹書房)、『永遠の一球-甲子園優勝投手のその後-』(河出書房新社)、『沖縄のおさんぽ』(KADOKAWA)、などがある。オフィシャルサイトwww.takarin-m.com

【仕様】
●発売日:2022年4月17日
●ページ数:392頁
●定価:2,200円(本体価格2,000円+税)
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