スポーツ

門田博光、江夏豊etc.昭和プロ野球のサムライたちは「取材時も意識的に圧をかけてくる」

プロ野球界でスジを通した男たちの光と闇

 門田博光、田尾安志、広岡達朗、谷沢健一、江夏豊……昭和のプロ野球で活躍したレジェンドたちの“生き様”にフォーカスを当てた書籍『確執と信念 スジを通した男たち』が4月17日に発売された。 確執と信念 スジを通した男たち 華々しく見えるプロ野球界においても、好成績を残したからといって必ずしもフロントやコーチ、監督になれるわけではない。サラリーマン社会と同様、擦り寄り、迎合することが球団に残る一番の近道と言われ続けている。だが、かつては理不尽な物事に対して己を貫き、正々堂々と立ち向かう選手たちがいた。  己の正義を貫くことで、疎んじられもした。監督と衝突し、チームを追われたこともあった。メディアとの対立で虚像を語られることもあった……。けれど、自分を貫いた男の元に、最後には必ず人が集まってくる。そんな、矜持を持ち続けてサムライのような生き方をしたプロ野球選手たちの漢の生き様を深掘りする392ページに及ぶ一冊だ。  なぜ「確執」をテーマにしたのか。なぜ今、この5人の生き様を追ったのか——。その真意を、著者である作家・松永多佳倫氏に伺った。

「確執は必ずしも”悪”ではない」

『確執と信念』の第1章では“不惑の大砲”こと門田博光の生き様にフォーカス。南海時代の監督であり、ともにクリーンナップを担った野村克也との関係性の真実にも迫っている

――なぜ今「確執と信念」というテーマで昭和期のプロ野球を切り取ろうと思ったのか? 松永多佳倫(以下、松永):人間の悩みの根源って、大半が“人間関係”だと思うんです。会社、恋愛、友だち、親兄弟との関係性がうまくいっていれば、多少お金がなくともメンタルは平気なもんです。それって裏を返せば、人間は“人との繋がり”がないと生きていけないということなんだと思います。  誰しも、組織に入っていれば大なり小なり「ウマが合う・合わない」人や物事って必ず出てくるもので、それが後に確執と呼ばれたりするようになります。  確かに「確執」という単語を耳にすると、いかにもバチバチの全面戦争的な関係性に聞こえがちですけど、僕は、確執そのものは必ずしも悪いものではないと思っているんです。なぜならば、確執は必ず「自分が信じる義」を貫くことで生まれるからです。自分を信じて突き進んだ結果生まれるもので、いわば何かを成し遂げるための“最後の試練”のようなもの。誰しも生きていれば必ず経験するものだと思うし、確執が起こる一番の要因はそれぞれ信念があるからなんです。だからこそ、「確執」を紐解けばその人の「信念」が見えてくる。確執と信念は一蓮托生であり、人間が生きていくうえで避けられないテーマだと思ったからです。
次のページ
実は1本の糸で繋がっていた5人のレジェンド
1
2
3
作品概要・収録内容
確執と信念 スジを通した男たち


1章:門田博光 奇才と孤独 〜稀代の豪打者が抱える“19番”への恩讐〜
2章:田尾安志 衝突とプライド 〜天才打者が選んだ「新設球団 初代監督」の道〜
3章:広岡達朗 反骨と改革 〜プロ野球界に68年身を置く男の矜持〜
4章:谷沢健一 派閥と人徳 〜“ヤザワ”と中日ドラゴンズ〜
5章:江夏豊 義理と器量 〜裏切られ続けた史上最高左腕


【著者プロフィール】
松永多佳倫(まつながたかりん)
1968年生まれ。岐阜県出身。琉球大学卒。出版社勤務を経て2009年8月より沖縄在住。著書に、『まかちょーけ 興南甲子園春夏連覇のその後』、『偏差値70の甲子園-僕たちは文武両道で東大を目指す-』、映画にもなった『沖縄を変えた男―栽弘義 高校野球に捧げた生涯』、『偏差値70からの甲子園-僕たちは野球も学業も頂点を目指す-』(以上、集英社文庫)、『善と悪 江夏豊のラストメッセージ』、『最後の黄金世代 遠藤保仁』、『史上最速の甲子園 創志学園野球部の奇跡』(以上、KADOKAWA)、『マウンドに散った天才投手』(講談社+α文庫)、『日本で最も暑い夏 半世紀の時を超え、二松学舎悲願の甲子園へ』(竹書房)、『永遠の一球-甲子園優勝投手のその後-』(河出書房新社)、『沖縄のおさんぽ』(KADOKAWA)、などがある。オフィシャルサイトwww.takarin-m.com

【仕様】
●発売日:2022年4月17日
●ページ数:392頁
●定価:2,200円(本体価格2,000円+税)
おすすめ記事
ハッシュタグ