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「正社員の特権」を得るために奴隷になっていませんか?日本型雇用の矛盾

残酷なパイの奪い合いが始まった

正規雇用 非正規雇用

写真はイメージです

 さて、すべての人が終身雇用の恩恵にあずかれた時代が終わると、残酷なパイの奪い合いが始まりました。1990年代中ごろから、その傾向は顕著になります。一部の人が正社員として採用されこれまで通り終身雇用で守られた半面、そのコースから外れた人は極めて不安定な雇用条件を飲まざるを得なくなりました。いわゆる、非正規雇用の問題です。  この点について、誤解している人が多いので一言申し上げておきます。非正規雇用が増えたのは竹中平蔵さんのせいではありません。濡れ衣です。そもそも、非正規雇用という制度は1980年代から始まる働き方改革、多様な働き方といった国の政策に沿うものであり、竹中氏がひとりで作り上げたものではありません。元になる法律、労働者派遣法は1986年7月に施行されております。その後、この法律は何度も改正されています。竹中氏は2004年時点で経済財政政策担当大臣をやられていましたが、これは内閣府特命大臣であり労働者派遣法は管轄していません。

上級国民の正社員と奴隷の非正規雇用

 非正規雇用は、1950年から高度経済成長期にかけての出稼ぎや1980年代に増加した主婦のパートなども該当します。実は随分前から始まっていたのです。1986年の労働者派遣法は、こうした正社員ではない働き方の法整備が不十分だったので、そこにしっかりした法的地位を与え労働者を保護することを目的としていたわけです。ところが、日本のバブルが崩壊したことにより、非正規雇用は企業がコストを削減するためのバッファー(緩衝材)として使われるようになってしまった。確かにそういう風にも使えますから。  景気悪化を乗り切るための人身御供として非正規雇用を利用し、その犠牲の上に成り立っていたのが1990年代以降の正社員の終身雇用でした。これ以降、世の中には正社員という「上級国民」と非正規雇用という「奴隷」が存在するかのような、そんな分断がこの国に広がっていきました。
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正社員の特権を得ようとして奴隷になっている
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1969年、東京都生まれ。経済評論家。中央大学法学部法律学科卒業。在学中は創立1901年の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年、経済評論家・勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任(現在は代表取締役)。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一名誉教授に師事し、薫陶を受ける。リフレ派の論客として、著書多数。テレビ、ラジオなどで活躍中

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