「正社員の特権」を得るために奴隷になっていませんか?日本型雇用の矛盾
働いても正社員になれない。そんな非正規雇用者が増えた理由は何なのか。経済評論家として活躍する上念司氏が、バブル崩壊後から現在に至るまでに発生した日本経済と雇用の経緯を取り上げながら、正社員と非正規社員の分断が起きた理由や、昨今の若者が正社員の地位を強く求めることの是非について解説する。
(以下は、上念司著『あなたの給料が上がらない不都合な理由』の一部を編集したものです)
1991年のバブル崩壊以降、日本経済の様相は一変しました。いつの間にか経済全体の拡大は頭打ちになります。そして、その限られたパイの奪い合いが常態化します。
1980年代まで当たり前だった終身雇用も、バブル崩壊以降曲がり角を迎えます。企業が右肩上がりの成長を前提とする時代は終わり、採用活動も極端に抑制されてしまいました。特にバブル崩壊以降、1994年から2000年にかけて社会に出た人々がこの悪影響をもろに食らってしまいました。いわゆるロスジェネ(ロストジェネレーション、失われた世代)と言われる人々です。
幸いなことに、私は最後のバブル就職組だったのでギリギリセーフでしたが、結局、1年もしないで会社を辞めてしまったので似たようなものかもしれませんね。将来に対する漠然とした不安を感じながらも、何もできない自分。20代の若者には重すぎる現実だったかもしれません。
ランクの高い会社を辞めた新卒社員は、自分を見つめ直すために旅に出たり、突如として資格試験の勉強を始めたりして迷走するのですが、私はそうはしませんでした。「一身独立して一国独立す」という福沢諭吉の言葉通り、まずは経済的に自立せねば何も始まらないと思ったからです。だからこそ、ニートは半年で卒業しました。
何でもいいから働きたいと思って、当時はまだ神奈川県の小さな塾にすぎなかった臨海セミナーの面接を受けました。いろいろあって、とりあえず契約社員からのスタートになったのですが、とりあえず金をもらえるならと働き始めました。たぶん、ここで考えさせてほしいとか言っちゃう人もいるんでしょうね。
とりあえず働けるってことはチャンスじゃないですか。職種は何であれ、そこで結果を出せば次の展開も見えてくるでしょ?
私はとにかくニートに戻るのは嫌だという一心で契約社員のオファーに応じました。ニートとしての時間はお金を生みませんが、契約社員としての時間は給料というリターンを生むからです。そして、3か月勤務したところで、運よく塾長から正社員になって欲しいと言われました。もちろん二つ返事でOKしました。
考えてみれば、短い間でもニートを経験したことが良かったのかもしれません。あれに戻るぐらいなら何でもいいやって思えましたから。多くの人が正社員にこだわって、せっかくのチャンスを逃しているのではないかと思います。仕事は形から入らないほうがいい。そのほうがチャンスは広がると思いますよ。
バブル崩壊後、日本経済は一変した
半年間のニート生活の末……
1969年、東京都生まれ。経済評論家。中央大学法学部法律学科卒業。在学中は創立1901年の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年、経済評論家・勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任(現在は代表取締役)。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一名誉教授に師事し、薫陶を受ける。リフレ派の論客として、著書多数。テレビ、ラジオなどで活躍中
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『あなたの給料が上がらない不都合な理由』 日本人が囚われている貨幣の幻想を打ち砕く“経済の掟" |
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