お金

「日本の物価上昇」はまだこれから。世界中で進行するインフレの正体

なぜ日米で物価上昇圧力に差があるのか?

FRB

 かつてアメリカの財務長官を務めたラリー・サマーズ氏によれば、物価の上昇は今始まったばかりで、むしろこれからが本番だそうです。特にアメリカの場合、物価上昇がまだまだ続く理由として、サマーズ氏は物価の構成要素の3分の1を占める家賃の上昇がまだ反映されていないと述べています。  FRBは経済ショックの引き金を引きたくないのでおっかなびっくり利上げしていますが、サマーズ氏は「これでは全然足らん!」とお怒りです。今からしっかり引き締めておかないと、物価が暴走して激烈な引締めで経済ショックを起こしかねないと心配しているわけです。アメリカは本当に物価圧力が強烈なんですね。日本はこんなにマイルドなのに……。  なぜこんなことになるんでしょう。これは私の仮説ですが、日米の物価上昇圧力の差はコロナ対策にかけた予算の差ではないかと思っています。次のグラフは各国の新型コロナ関連の財政支出(GDP比)を比較したものです。
各国のコロナ危機対応

出所:Cantu et al.(2021)より第一生命経済研究所が作成

日本はバラマキを抑制しすぎていた?

 グラフの全体の長さよりも中身に注目してください。「非医療分野の財政支出」というのがいわゆる給付金や失業手当などのバラマキに当たる部分です。このカテゴリーにおけるアメリカの財政支出は突出しているのが分かります。単純比較で日本の1.5倍ぐらいですよね?  このグラフはあくまでGDP比ですから、絶対額では1.5倍のさらに3倍で4.5倍ぐらいの差がついていると考えてください。それだけのお金がバラまかれたら、人々の需要が爆発して供給不足が起こって当然ですよね。日本の場合はバラマキをむしろ抑制しすぎたために、物価上昇の出足がやや遅くなっていると思います。あくまでも私の仮説なので、ご参考まで。  いずれにしろ、コロナショックのおかげで、世界中でお金がバラまかれました。お金の量が増えれば、いずれインフレが起こる。これまでの低すぎるインフレからある程度高いインフレへ。世界経済は大転換しようとしています。それを生かすも殺すもあなた次第。いずれにしても発想の転換が必要ですね。<文/上念 司>
1969年、東京都生まれ。経済評論家。中央大学法学部法律学科卒業。在学中は創立1901年の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年、経済評論家・勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任(現在は代表取締役)。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一名誉教授に師事し、薫陶を受ける。リフレ派の論客として、著書多数。テレビ、ラジオなどで活躍中
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