――本の中でも、KOOさんは家族だけではなく、仕事関係の人に対しても、先輩後輩関係なく素直に意見を聞くと書いてありました。
DJ KOO:以前は良い意味でダンスミュージックというものに固執していたんですが、いろんな人と関わっていくことで、仕事の幅も広がって。根本にあった「かっこいいDJをやるんだ!」という気持ちが、徐々に「自分はみんなを元気にするんだ。その一つの方法にDJがあるんだ」という考えに変化していったんです。そういう考えになってからは、ゲームコンテンツ、盆踊り、アニメなど、いろいろなジャンルとコラボすることが増えて、よりDJが楽しくなりました。そこには先輩もいれば、若いアイドルの子たちもいますし、いろんな意見を聞くことができます。60歳を過ぎて、大病も患ったけど、まだまだアップデートしていけるんだなと実感しています。そもそも僕がバラエティーに出させていただくようになったのは52歳ですから(笑)。
――50代で出始めたとは思えないほど、KOOさんのバラエティーの対応力は凄まじいですよね。
DJ KOO:芸人さんの現場を実際に見せていただくことで、チームワークの素晴らしさを目の当たりにしたりして、いろんな刺激を受けています。
――バラエティーに出るようになって、周囲の反応も変化しましたか?
DJ KOO:良い意味で「KOOさんは何でもやってくれる人なんだ」ということが認知されたと思います。「TRFのDJ KOO」というと、ちょっと大御所っぽい扱いというか、そういうポジションに見られがちだったんです。でも、バラエティーに出るようになって、そこの垣根はなくなりました。バラエティーに出始めた頃、生放送でホリケンさんと相撲をとってグダグダになって(笑)。それから芸人さんがいじってくれるようになったり、アイドルの子たちとコラボしたり、「アイドルマスター」というゲームとコラボしたり。年齢に関係なく、どんどん新しい世界を知ることができるのは幸せです。
ポジティブに生きる術とは?
――KOOさんは子どもと接する時も、大人の目線じゃなくて、その年齢まで自分を下げると本に書かれていましたが、そうした柔軟性も年齢を重ねると難しくなる人も多いと思います。
DJ KOO:誰しも年齢を重ねると、「自分はこれだ!」というものを持っていると思うんです。でも、あえてそれを表に出さなくても、考え方を柔軟にしていけば、自然とそこで生まれてくるものに自分を委ねることができて、後輩の方たちと同じ目線で話ができるんじゃないですかね。どうしても上司の方って、「上司だ!」という意識を持って接するじゃないですか。でも、意識しなくても周りから見たら上司なんですよ(笑)。だから、そこまで上司であることに固執せずに、心をオープンにして話しかけるんです。たとえば後輩社員が新商品のお弁当やお菓子を買った時に、「何これ?」と聞くだけでいいんです。それでコミュニケーションが生まれますし、後輩社員の方も、ちゃんと自分に関心を持ってくれているんだなと理解する。子どもだって、相手が同じ目線で接していると、自分のことを見てくれているんだなと感じ取るはずなんです。ちょっとした気の持ちようで、周囲の印象も変わるのではないでしょうか。
――年を取ってくると、なかなかKOOさんのように前向きになれない人も多いと思うんですけど、そういう時はどうすればポジティブに変換すればいいのでしょうか?
DJ KOO:僕もそうなんですけど、年齢を重ねると、いろいろなことがパターン化していくじゃないですか。確かにパターンを作っていくと楽なんだけど、マンネリでツマらなくなっちゃうんですよね。そうならないように僕はパターン化を、あえて「ルーティン」と呼ぶようにしていて、繰り返しではあるんですけど、ちょっとずつ変化を楽しむんです。たとえば僕はパンが好きで、よくパン屋さんに買いに行くんですけど、いつものパンを2個買ったら、3個目は食べたことのないパンにする。そうやって、ちょっとした楽しみのルーティンを作っていくと、それが増えて行って、生活習慣に新しい基盤がでてくる。そうすると物の見え方や、パターン化しておざなりになっていたものが変化して、意識も向上してくると思います。
60歳を過ぎてアップデートしていける、そう胸を張って語れる人がどれほどいるだろうか。青天の霹靂だった大病の告知と死の恐怖ーー逃げ出したくなるような苦境に陥っても、好奇心を失わずにポジティブに生きる、DJ KOOの強さの片鱗を改めて見た気がする。
DJ KOO(ディージェイ・コー)
1961年8月8日生まれ、東京都出身。トータルCDセールスが2100万枚を超え、今なお多くの人に愛される続けているダンス&ボーカルグループTRFのDJ、リーダー。 ソロとしては、“触れ合う人々をエネルギッシュに!元気に!笑顔に!”をモットーに、ダンスクラシック、EDMから、J-POP、アニソン、ゲーム音楽まで幅広い音楽をDJスタイルにてプレイし、共感、賛同を得ている。2017年から日本の文化である“お祭り”“盆踊り”とのコラボレーションをエンターテイメント型ジャパンカルチャーの発信として、国内外において精力的に活動を行っている。バラエティー番組にも多数出演。幅広い層のファンを獲得している。
<取材・文/猪口貴裕 撮影/林 鉱輝>