更新日:2022年08月16日 19:13
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日本生まれ・育ちでも権利がない。難民申請が認められず、ビザを持たない子供たち

高校無償化も対象外

クルド人の小学6年生が描いた絵とメッセージ 子供たちはいつかビザを取り、家族みんなが日本で暮らしていけるために、勉学に勤しみ大学まで目指す子もいる。私立高校はお金がかかるということで、公立高校を目指すことが多いが、入学してからもまた大きな壁にぶち当たることになる。  ビザのない子供は、就学支援金制度(いわゆる高校無償化)の対象外だ。日本人の子供とは違って支援金が出ず、授業料等がかかる(たとえば埼玉県の公立高校で年間25万円くらい)。さらに、高額の制服代などが上乗せされる。  仮放免の状態であれば、生活が困窮している家庭がほとんどだ。大学に進学することでビザがもらえるケースがあるが、そこまでいくには並大抵のことではない。大学に行く可能性を、国の制度によって経済的に阻まれていると言える。  入管では「学校に行ってもどうせ(母国に)帰るのだから意味がない」と酷い言葉をかけられ、意欲を失い学校をやめてしまう子もいた。その子は20代半ばになっても未だに仮放免のままである。就労許可もなく、働けないままでいる。  埼玉県川口市にはクルド人の学生が多い。埼玉県財務課授業料奨学金担当に話を聞いてみた。 「仮放免の立場だと、住民票がない、つまり特定できる住所がないので就学支援制度の対象にはならない。これは国の定めている法律なので現時点ではどうすることもできない」  なんともやるせない話である。

クルドの子供たちのメッセージ

写真展のチラシにはトルコ語で「いじめ おわり」と書かれている

写真展のチラシにはトルコ語で「いじめ おわり」と書かれている

 8月18~21日に、東京・高円寺でクルド人の子供たちの絵画展をやることになった。その絵に書いてあるメッセージは、 「仮放免じゃ、意味がない。ビザがほしい」 「いじめは終わり」  と、心が痛くなるようなメッセージが多い。子供たちは日本生まれでも、日本人と見た目が違うだけでイジメの対象になってしまうこともある。日本語が上手ではない親の変わりに筆者が教師や教育委員会にいくら訴えかけても、どうしても改善の様子は見られない。  また彼らは、親や自分自身にビザがなく、日本にはいられない状態であることを子供ながらに理解している。子供は誰もが社会の大切な宝であり、未来への可能性を持っている。子供たちの未知の可能性を、大人たちが潰してしまってよいのだろうか。子供は誰もが健やかに成長してほしいものだ。この絵画展を多くの人に見に来てほしい。そして考えてほしい。 子供を守るのは大人の役目ではないだろうか。 写真・文/織田朝日
おだあさひ●Twitter ID:@freeasahi。外国人支援団体「編む夢企画」主宰。著書に『となりの難民――日本が認めない99%の人たちのSOS』(旬報社)、入管収容所の実態をマンガで描いた『ある日の入管』(扶桑社)

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