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沖縄で芽吹く”ミレニアル世代”「優秀な若者が沖縄で働ける環境をつくりたい」

「ゴチャゴチャ感がまた沖縄の良さ」

沖縄で芽吹くミレニアル世代

MAIKO氏

「故郷をなんとかしたい」という信念を持って立ち上がろうとするのが、沖縄の若者のメンタリティでもある。沖縄戦で約20万人(うち約12万人が県出身者で当時の県人口の1/4)の人が凄惨な地上戦によって亡くなり、生き残ったおじいおばあや、小中学校の「平和教育」の授業により“命の重み”を何十年に渡って子どもたちに連綿と説いてきた。そのため、ひとつひとつ家族の絆が強固であり、県外に出ても「いつかは沖縄に戻りたい」という思いが強い。政治と経済が密接にリンクする沖縄ゆえに、このままではいけないという意識を潜在的に持っているのだ。  大人気アニメ『NARUTO-疾風伝-』の主題歌を歌うなど、沖縄を拠点に活動しているメジャーバンド「seven oops」のボーカルNANAEとドラムのMAIKOはともに34歳の沖縄育ち。彼女たちは沖縄のミレニアル世代かつ第一次ゆとり世代でもある。MAIKOは真摯にこう話す。 「立ち飲みなんかで隣に座った、県外から来たおじさんに基地問題とか触れられることがあるんですけど、流れに身をまかすのが沖縄だと思うんです。歴史的に見ると、今よりもっと苦しんでいる沖縄があったのは知っています。アメリカが統治したことで新しい文化が入り、沖縄市がロックの聖地となり、それでいて沖縄文化のエイサーがある。整理整頓されていないデメリットもあるけれども、このゴチャゴチャ感がまた沖縄の良さのひとつでもある。いろんなものが生まれては消え、その中から引き継がれるものがもある。無理にすべてを正そうとすると、良いところまでもなくなってしまうんじゃないかなと思ったりします。各々の中で正しいと思うことはたくさんありますから」

沖縄で芽生えるグローバリゼーション

 ボーカルNANAE(34歳)も独自の目線で語ってくれた。 「生まれる前から当たり前のように基地がある私たちの世代は、今いる自分の場所を踏まえて『自分の人生は自分しか責任が取れない』と、早い段階から考えているのかなと思います。同世代を見ると、独立してやっている人たちが多い。それは幼い頃からの世の中の空気感や大人たちをずっと見て育ってきたからなのかもしれません。好きなことを突き詰める熱は、理論や理屈ではありません。世の中に絶対はなく、唯一ある“絶対”は死だけです。だから死ぬ寸前に、面白い人生だったなぁと悔いがないようにと毎日生きています。私の場合は決められたレールがつまらなそうだったので、だったら自分の好きなことをやりたいという思いが心を動かしましたね」  彼女たち世代は、常に俯瞰で物事を、そして沖縄を捉えているところがある。沖縄という土壌のせいかグローバルで見る感覚が幼い頃から養われ、誰かを比べて蹴落とすのではなく、皆で一緒にやろうという仲間の大切さを肌でわかっている。それが、沖縄のミレニアル世代の大きな強みでもある。
沖縄で芽吹くミレニアル世代

NANAE氏

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沖縄の政治家たちの素顔
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1968年生まれ。岐阜県出身。琉球大学卒。出版社勤務を経て2009年8月より沖縄在住。最新刊は『92歳、広岡達朗の正体』。著書に『確執と信念 スジを通した男たち』(扶桑社)、『第二の人生で勝ち組になる 前職:プロ野球選手』(KADOKAWA)、『まかちょーけ 興南 甲子園優勝春夏連覇のその後』、『偏差値70の甲子園 ―僕たちは文武両道で東大を目指す―』、映画化にもなった『沖縄を変えた男 栽弘義 ―高校野球に捧げた生涯』、『偏差値70からの甲子園 ―僕たちは野球も学業も頂点を目指す―』、(ともに集英社文庫)、『善と悪 江夏豊ラストメッセージ』、『最後の黄金世代 遠藤保仁』、『史上最速の甲子園 創志学園野球部の奇跡』『沖縄のおさんぽ』(ともにKADOKAWA)、『マウンドに散った天才投手』(講談社+α文庫)、『永遠の一球 ―甲子園優勝投手のその後―』(河出書房新社)などがある。

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