お金

経済で失敗しまくった天保の改革。呉座勇一が考える水野忠邦の問題点とは?

負のスパイラルに陥っていた江戸幕府は、何を見落としていたのか?

 そもそも貨幣経済、流通経済が発達した江戸時代後期において、年貢米収入に立脚する幕府財政は既に時代遅れのものになっていた。商人への課税は御用金のような臨時課税や、特定業者への課税に留まり、経済全体から広く薄く恒久的に徴税する仕組みはなかった。  この歪な徴税構造が幕府財政の悪化につながり、財政の健全化を図ろうと貨幣改悪を行うとさらに物価が高騰し、幕府財政がますます悪化するという悪循環を生んでいた。天保の改革は江戸幕府の権威失堕をもたらしたとの評価もあるが、その理由は幕府財政悪化の根本原因にメスを入れず、庶民や商人などに犠牲を強いる小手先の対策で乗り切ろうと考えたことにあるのではないだろうか。

今週のフルネス

一時しのぎの物価対策、歳出歳入改革ではなく、抜本的な税制改革が重要になる
1980年、東京都生まれ。日本中世史を専門とする歴史学者。’16年に刊行された『応仁の乱‐戦国時代を生んだ大乱』(中公新書)は、48万部を超えるベストセラーとなり、歴史学ブームの火つけ役に
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