更新日:2024年01月29日 22:52
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松本人志への接待は将軍様以上か!? 上納システムの歴史を暴く

経済政策、憲法改正、Z世代の困窮etc. 日本人が抱えている大問題の解決策を、歴史から紐解いていく「呉座式・日本史フルネス」。 著書『応仁の乱―戦国時代を生んだ大乱』(中公新書)が48万部の大ベストセラーとなった歴史学者・呉座勇一氏が、現代と過去を結びつける“未来志向の日本史”を丁寧に解説。今の日本の突破口とは? 気鋭の学者が読み解く重厚な歴史の流れから、現代日本を考える。

松本人志への接待は将軍様以上か!? 上納システムの歴史を暴く

今、芸能界に大激震が走っている。『週刊文春』が、大御所お笑い芸人の松本人志の性加害疑惑を報じたのである。これに対し松本は、事実無根と主張し、『週刊文春』を名誉毀損で訴えた。 『週刊文春』の記事の真偽はさておき、記事の内容が大きな反響を呼んだのは、松本人志が女性をモノのように扱っているというだけでなく、後輩芸人が松本の歓心を買うために、女性を献上しているという告発があったからだろう。『週刊文春』は「恐怖のS E X上納システム」という煽情的な見出しをつけている。 記事が事実だとしたら、令和の日本での出来事とはとても思えない。むしろ、私の専門である中世日本でしばしば見る光景である。

親王になるため、お気に入りの妾を将軍に差し出す皇族も

日本史フルネス

南北朝の統一や勘合貿易を背景に絶大な権力を誇った室町幕府3代将軍・足利義満。内裏の女房と通じるなど、女性関係の派手さも目立つ(画像/鹿苑寺所蔵)

金閣を建てたことで知られる室町幕府の3代将軍・足利義満(あしかがよしみつ)は、たいへんな女好きであった。なにしろ弟の満詮(みつあきら)の妻まで寝取っているのである。義満は『源氏物語』の光源氏を気取っていたという説すらある。このため、女性を使って義満に近づこうとする者もいた。 永徳元年(1381)12月、常盤井宮満仁王(ときわいのみやみつひとおう)が親王宣下(しんのうせんげ)を受け、満仁親王になった。公家の三条公忠(さんじょうきんただ)の日記『後愚昧記(ごくまいき)』によれば、満仁は愛妾の小少将(こしょうしょう)を義満に差し出したので、義満が天皇に満仁を推薦したという。 公忠は日記に「比興々々(ひきょうひきょう)」と感想を記している。愛妾を義満に差し出すような低俗、卑屈な人物が親王宣下を受けるなんてひどい話だ、とんでもない事だ、という意味だろう。 現代人の目から見ると、義満や満仁は何とも破廉恥な男、女性の敵ということになるだろう。だが、この時代、家臣が主君に妻妾を差し出すのは、さほど珍しくもなかったようである。 応永27年(1420)、朝鮮から日本への使節として漢城(ソウル)・京都間を往復した宋希璟(そうきけい)が記した日本紀行文『老松堂日本行録(ろうしょうどうにほんこうろく)』に以下のような興味深い記述がある。宋希璟が日本側通訳の魏天(ぎてん・中国人)から聞いた話のようである。
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酔った義持は甲斐夫人と共に浴室に入り…
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1980年、東京都生まれ。日本中世史を専門とする歴史学者。’16年に刊行された『応仁の乱‐戦国時代を生んだ大乱』(中公新書)は、48万部を超えるベストセラーとなり、歴史学ブームの火つけ役に

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