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ベルク、若者が“遊びに行ける”スーパーに。「シェアしたくなる」集客戦略の秘密

1回で1万人集めるのではなく、100回のイベントで100人集めたい

杉野文則

原島一誠氏と株式会社ビーマップの杉野文則氏(右)。巨大な「U.F.O.」と共に

 驚いたのは、意思決定のスピード感。杉野氏から原島氏に「こんな企画はどうでしょうか」と話した翌日には実施が決まっていることも多いという。 「こうした販促に限らず、なんでも最速で決めようと意識しています。特にマーケティングは人それぞれ刺さるものが違いますから、成功失敗の線引きが難しい。そしてこのご時世、何が成功するかわかりません。まずはバッターボックスに入ってたくさん球を打つことが大事ではないでしょうか」  自分ひとりでは煮詰まってしまうため、社員から出来るだけアイデアの「数」を集める。アイデアを出しやすい「風土」にしておけばアイデアがどんどん集まる。そうしてどんどんチャレンジをする。  原島氏は、イベントにおいて1回あたりの集客よりも「反響の深さ」を重視していると話す。 「1回のイベントで1万人集めることを目指すのではなく、100回のイベントで100人ずつ集めたい、という考え方です。厳密な費用対効果は考えません。  もちろん、販促終了後は客足が遠のいてしまったり、元の売り上げに戻ってしまったり、一時的な効果に留まることはあります。しかし、お客様にとってその後の商品購入の選択肢が増えればいい。イベントへの応募を目的に購入したことがきっかけで、その商品をいいなと思って、その後も購入し続けてくださる可能性が出てくるので」  これまでの販促はどれも集客人数はそこまで多くないものの、満足度が高かったことの証左として、「メーカーやベルクのファンになった」というネット上の書き込みが見られる。  今後の課題は、イベントを通してファンになった人たちをつなぎとめておくことだと原島氏は言う。  

「ベルクに来ると楽しいことがある」と思わせたい

原島一誠

「採算度外視のフェスをやってみたい」と話す原島一誠氏

「採算度外視の“フェス”をやってみたいですね。たとえば店舗でその時間でしか聞けない楽曲があるとか、とにかく『ベルクの店舗に来ると楽しいことがある』と思ってもらいたいです」  実際、毎週金曜日に店内でも放送している「乃木坂46」「日向坂46」のラジオを毎週その時間に聞きに来ている人がいるというから「店舗での体験を提供」の効果はすでに実感している。  これまでと同じアプローチでは通用しない時代が来ているなかで、原島氏は「今の若者はモノを売る姿勢を出すと引いてしまう世代。さりげなく『こういうのもあるよ』と提案して、その中から買ってくれたらいいなというスタンスが大事です」と強調する。  目先の利益にとらわれすぎず、将来の顧客醸成につながるかもしれないという「長い目で見る」姿勢。  不確実な未来と向き合いながら、ベルクはこれからもどんどんバッターボックスに立ち、ヒットを打つに違いない。 <取材・文・撮影/松本果歩>
恋愛・就職・食レポ記事を数多く執筆し、社長インタビューから芸能取材までジャンル問わず興味の赴くままに執筆するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり、店長を務めた経験あり。X(旧Twitter):@KA_HO_MA
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