「たばこの歴史と文化」を知る旅
たばこと塩の博物館
愛煙家にとっては“第六の指”といってもいいほど慣れ親しんでいるたばこだが、「そもそもたばこって何?」という素朴な疑問を感じたとき、大人の社会科見学として訪れてみたいのが、東京スカイツリーのほど近くにある「たばこと塩の博物館」(東京都墨田区)。
収蔵されている資料は約4万点。常設展示「たばこの歴史と文化」は、アメリカ大陸で神と交信する儀式のための道具として使用されていた“たばこの起源”からはじまり、世界の様々なたばこやパイプ、喫煙具がズラリ。
たばこ文化の発生。「たばこを吸う神」のレリーフは人間とたばこの関係を示す最も古い資料とされている
パイプから葉巻、水パイプまで。世界の喫煙具がズラリ
大航海時代に世界中へ伝播したとされるたばこ。日本には、15世紀末に伝わったとされ、江戸時代には庶民にも普及し、江戸の町のたばこ屋を再現したジオラマが目を引いた。
江戸時代のたばこ文化
常設展示室の壁一面にしつらえてあるのが、日本国内の近代たばこ年表。当時のパッケージ写真や広告などと合わせて、嗜好品として愛され続けたたばこが、どう変遷されているのかを学ぶことができる。レトロパッケージや「今日も元気だ、たばこがうまい」などの名文句は、当時の雰囲気も感じられ、眺めているだけで楽しくなってくる。
近現代のたばこ文化(たばこメディアウォール)
懐かしいデザインにうっとりしてしまう
たばこと塩の博物館では、常設展示のほかに、そのときどきで特別展示も開催されている。現在開催されているのは「ヴィンテージライターの世界」。19世紀後半以降、さまざまな着火具の開発を経て、第一次世界大戦後に製造が本格化したオイルライター。着火に工夫があるものや、ユニークな造形のテーブルライターなど約200点が展示されている。
そもそもライターの着火機構は、打撃法と呼ばれる「火打ち石と火打ち金とで火花を起こし、その火花を燃料に移して火を得る」という人類が古来行ってきた着火方法がもとになっている。ライター開発の歴史は、この火を得る作業をいかにして一発の操作で実現するか、燃料を安全かつ手軽に持ち運べるようにするかの工夫の歴史で、時系列で見ていくと、造形美と装飾美はもとより、人類の叡智を感じられて面白い。
ヒューズライター(オイルを使わないライター)
ダンヒルの「ユニーク」(1920年代)
ロンソンのテーブルライター(1930〜1950年代)
ライター付スロットマシーン(日本)。レバーを倒すとスロットが回り、右上の穴から火が出る、ユニークな造形
第二次世界大戦中、アメリカ軍が兵士に支給した「ジッポー」の渋みのある色と味わいなど、ヴィンテージライターには、男が愛用すべき小道具としてのロマンをどうしても感じてしまう。
ジッポーのブラッククラックル・モデル(1940年代 第二次世界大戦中の軍用モデル)
知っていそうで知らないたばこの歴史と、骨董価値の高い名品揃いの喫煙具の世界。慌ただしい年の瀬に、ちょっと一服するような心持ちで、ぜひ足を運んでみては。
「ヴィンテージライターの世界 炎と魅せるメタルワーク」
会期:2022年12月25日(日)まで開催中。
主催:たばこと塩の博物館(2階特別展示室)
所在地:東京都墨田区横川1-16-3
入館料:大人・大学生:100円/満65歳以上の方(要証明書):50円/小・中・高校生:50円
開館時間:午前10時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日
取材・文/日刊SPA!取材班