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紅白歌合戦が抱える「すべての世代に共有される音楽」というムリゲー

通常の音楽番組も大苦戦

『ミュージックステーション』番組公式ホームページより

 音楽が共有されないから通常の音楽番組も大苦戦を強いられている。11月11日のテレビ朝日『ミュージックステーション』はコア視聴率(13~49歳の個人視聴率)こそ4%と高かったが、4歳以上の全てを表す個人全体視聴率は3.7%と振るわなかった。50歳以上にあまり観られていないのである。なお、民放もNHKも実務では使わない世帯視聴率は6.0%だった(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。  この日の『Mステ』にはRADWIMPS、あいみょん(27)、LiSA(35)、緑黄色社会らが出演した。いずれも若者には人気の面々で、だからコア視聴率は高かった。しかし50歳以上の多くに敬遠されたのだ。紅白に限らず、音楽が共有されない時代に音楽番組で高視聴率を得るのは至難だ。  共有されないからミリオンセラーも容易には生まれなくなった。世代を超えて聴かれないと、100万枚を突破するセールスは難しい。一般社団法人日本レコード協会が認定したミリオンセールスは2000年には宇多田ヒカル(39)の『Wait & See ~リスク~』や大泉逸郎(80の『孫』、KinKi Kidsの『フラワー』など18曲もあった。  それが2010年にはAKB48の『Beginner』だけに。2020年は嵐の『カイト』Snow Manの『KISSIN’ MY LIPS / Stories』など6曲あったが、昨年はゼロだった。

世帯視聴率で見れば

 紅白の昨年の視聴率(2部)は世帯が34.3%で個人が24.8%。世帯は過去最低だった。世帯視聴率は過去最低を更新すると見る。若者を意識した人選に対し、数が多く、世帯視聴率に大きな影響をもたらす高齢者(65歳以上)が反発するからだ。  もっとも、NHKはもう世帯視聴率を使っていない。現在の標準指標は視聴者の性別や年代が細かく分かる個人視聴率だ。だから世帯視聴率が最低を更新しようが、NHKは気にしない。問題は若者が観てくれるかどうか。中高年以上から人選への不満をぶつけられ、若者も観てくれなかったら、NHKはショックに違いない。<文/高堀冬彦>
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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