恋愛・結婚

「好きや愛してるを使えない」ラブレター代筆屋が明かす仕事の苦悩

相手に渡さないラブレター

ラブレター代筆屋 誰かを想いながらも投函予定のない、「心の整理」を目的とした依頼もやってくる。好きだった相手への未練を断ち切りたいなど、区切りの手紙だ。そのような依頼に対しては、別れの言葉を意識しているという。 「自分自身の中で別れを告げるために書くのも、手紙の使い方のひとつだと思います。『さよなら』を伝えて区切りをつけないと、ぼわっとした未練として残ってしまいますから。さよならって言葉はすごく大事だと思っているし、執着もありますね」  さよならへの執着。それには、ふたりの女性との思い出が深く関わっている。 「ひとりは20代の頃に付き合っていた恋人です。彼女は外国人で、ストレートに愛情表現をしてくれる人でした。いつも『好き?』と聞かれていたけど、僕は照れくさくて誤魔化していた。ある日、いったん帰国するという話になり、『戻ってきたら連絡するね』と言った彼女を見送ったまま、二度と会えなくなってしまった。後々になって、事故に遭ったと風のうわさで知りました」  愛も別れもろくに告げられなかったことは、心の中にいつまでも残った。別れを言えなかった二人目は、自身の母親だ。

死期が迫った母に伝えられなかった「さよなら」

ラブレター代筆屋「母が病気で余命宣告された時、本人には知らせないと家族で決めたんです。死期が迫っていると悟られないよう、僕も家族もいつも通りに接していました。本当はちゃんと伝えて、最後を意識しながら過ごせたらよかったのかもしれませんが……」  別れの時が迫っていると伝えられず、亡くなるまで「じゃあまたね」を繰り返した。さよならを伝えたかったと小林さんは零す。 「さよならって言葉には、いろんな要素が含まれている気がしているんです。一緒に過ごした時間への感謝とか。だから別れを言えるだけでも、その後の気持ちのあり方が違うと思うんですよね」
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価値観に変化を与えた大きな出来事
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福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院修了。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。X(旧Twitter):@0ElectricSheep0、Instagram:@0ElectricSheep0

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