スポーツ

“ペッパーミル”自粛が物議。高校球児のパフォーマンスが叩かれるワケ

伝統があるからこそ、保守的に

尾見康博

尾見康博氏

 生徒の自主性を重んじることも教育の一環と言える。しかし、一向にその気配はない。高野連は「世間の声は届かない」という印象が強く、もはや伝統を重んじることを目的にした組織に思えてしまう。 「高野連に限りませんが、特に伝統があればあるほどその組織は保守的になりやすく、大きな変革が生じにくい傾向があります。その背景には先輩後輩の上下関係が卒業した後もいつまでも続くことにより、“年長者の発言力が常に強くなる”ということが大きいでしょう。  また、たとえ少数派であっても世論からも一定の支持がある限り、変える選択よりも変えない選択を取りやすいということもあると思います。今回のペッパーミルの是非に対しても『やるべきではない』『注意されて当然』という声は一定数上がっています。賛否の割合は不明ですが、少しでも否があればなかなか変革することは難しいです」  高野連が保守的な理由が見えてきたが、そのことが様々な問題への対処の遅さを呼んでいるのかもしれない。尾見氏も「高校野球も少しずつ変革しており、その方向性は適切だと思います」としつつ、「そのスピードは遅いとも思っています」と語った。

柔軟性のある組織の存在が必要か

 近年、野球離れが深刻化している。例えば、日本代表がWBCで躍動する姿を見て「野球をやってみたい」と子供たちが思っても、部活の野球に息苦しさを覚え、プレーするまでに至らない可能性も高いはず。高校球児をはじめとした子供たちが伸び伸び、楽しそうにプレイできるような環境を整備することが、子供の野球離れ改善に繋がりそうなものだが。 「確かにWBCでの優勝は、野球離れに歯止めをかけるかもしれないという意味で好影響を与えるでしょう。実際、他の競技と比べて“規律”が厳しいことが野球離れを起こしている一因になっているとは思います。また、高野連自身が『時代に適した規律であるか』を常に意識するようになると流れは変わるかもしれません。  そのためには、例えば、30代だけで構成される委員会を高野連に新設して、海外の高校から、練習方法や試合形式、社会との関係の取り方など学びながら、規律を柔軟に緩められると良いように思います。もちろん、簡単ではありませんが」
次のページ
「日本と韓国くらいしかない」習慣も
1
2
3
フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ