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“ペッパーミル”自粛が物議。高校球児のパフォーマンスが叩かれるワケ

 第95回選抜高校野球大会がいよいよ佳境を迎えている。はつらつと楽しそうにプレーする高校球児の姿に元気をもらっているは多いだろう。ただ、高校球児だけではなく視聴者の笑顔を奪う事態が起きた。大会初日の18日に行われた山梨学院対東北高校の試合中、東北高校の選手がエラーで出塁した際、侍ジャパンのラーズ・ヌートバー選手が流行らせたパフォーマンス“ペッパーミル”を披露したところ、塁審に注意される場面があった。  この件は物議をかもし、日本高校野球連盟(以下、高野連)は「高校野球としては、不要なパフォーマンスやジェスチャーは、従来より慎むようお願いしてきました。試合を楽しみたいという選手の気持ちは理解できますが、プレーで楽しんでほしいというのが当連盟の考え方です」という異例の声明を出すも、これに対しても批判的な声が相次いだ。
高校野球

写真はイメージです

そういえば“金足旋風”の時も…

 そもそも、高校野球はプロ野球で見られるような、ホームランを確信した時の派手なバット投げ、ホームランを打った際にコーチャーとのハイタッチは自重されている。また、2018年に開催された第100回全国高校野球選手権大会で“金足旋風”を巻き起こした、金足農業高校の選手達が見せた“侍ポーズ”に対しても審判から注意が入り、自粛せざるを得なくなった。  なぜ高野連はこれまでに保守的なのだろうか。『日本の部活(BUKATSU):文化と心理・行動を読み解く』(ちとせプレス)山梨大学大学院総合研究部教授の尾見康博氏に話を聞いた。

高野連の規律は厳しすぎる

 今回の騒動について尾見氏は、「審判や高野連は日本の高校野球の“規律”を重視したものと思っています。『妥当な判断かどうか』というと、どこを基準にするかによりますし、第三者が『妥当ではない』というのも難しいです。ただ、個人的には高野連の規律は厳しすぎる印象があります」と持論を述べる。  出場する球児は例外なく坊主頭。冷静に考えると異様に思えてしまうものだ。令和の時代にもかかわらず、ここまで厳しい規律を維持し続ける理由は一体なぜなのか。 「“高校野球は教育の一環”とされていること大きいからだと思います。そのため、今回の声明のように“高校生らしく”みたいな説明が多用されるわけです。とはいえ、教育の一環というのであれば、時に授業より優先されたり、体罰はもとより必要以上に怒鳴り散らして暴言を吐く行為が“指導”とされたりなど違和感を覚えることは多いです。  さらには、夏の甲子園大会が開催される度に毎回議論に上がる『炎天下で試合をさせることの是非』や『勝利至上主義に囚われた投手の連投』など、生徒の健康に対する配慮不足も未だ問題視されています。野球部の活動は課外活動の一つでしかありませんが、明らかに教育の一環の枠から外れているケースは少なくなく、矛盾を感じざるを得ません」
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伝統があるからこそ、保守的に
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フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki

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