更新日:2023年09月08日 06:56
お金

「ローン完済後に無価値になる家」とは。一級建築士が指摘する“残酷な現実”

中古の家を再利用するとしたら

 中古の家に関してはどうでしょうか? 現在、日本には820万戸の空き家があります。これらを有効利用するためのアイデアが求められています。  持ち家として中古の家を購入したとします。ただ、家の平均寿命が30年程度だとすると、30年を超えている家はすでに寿命が来ているわけです。程度にはよりますが、改修工事をしても10~20年程度寿命をもたせるのが限界です。  仮に改修工事に1000万円かけたとしましょう。その家が20年もったとして年間50万円の先行投資です。ましてや、20年後には家の価値は0になり、土地代のみです。つまり、20年後の不動産としての資産は、改修工事代を含めて1000万円の損失になります。

持ち家VS賃貸論争は前提次第で答えが変わる

 そして残念ながら、日本においてほとんどが耐久消費財の家のため、この現状から逃れることは出来ません。それに対して、「資産価値が持続する家」はどのようになるのでしょうか?   仮に土地の値段2000万円、家の値段3000万円の総額5000万円で家を建てたとします。ちなみに「耐久消費財の家」の場合は、30年後の不動産価値は土地代の2000万円程度になります。  それに対して「資産価値が持続する家」の場合は、家の価値を保つことが出来るので、総額5000万円程度を資産価値として保つことも可能です。 「持ち家が得か? 賃貸が得か?」という議論をよく耳にしますが、「耐久消費財の家」の場合は、賃貸のほうが有利ですが、「資産価値が持続する家」の場合は、持ち家のほうが断然有利になります。ここから分かるように、この議論は前提次第で答えがまるっきり変わってくるのです。 <TEXT/一級建築士 八納啓創>
1970年、神戸市生まれ。一級建築士、株式会社G proportion アーキテクツ代表取締役。「地球と人にやさしい建築を世界に」をテーマに、デザイン性、機能性、省エネ性や空間が人に与える心理的影響をまとめた空間心理学を組み込みながら設計活動を行っている。これまで120件の家や幼保園、福祉施設などの設計に携わってきた。クライアントには、上場会社の経営者やベストセラー作家をはじめ「住む人が幸せになる家」のコンセプトに共感する人が集い、全国で家づくりを展開中
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