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“ひと味足りない”ときには砂糖を入れるべし。誰でも「自炊の飯が美味くなるコツ」を人気料理研究家が伝授

加熱とは「中心温度を100℃にすることではない」

――すごく分かりやすかったです。そして、2つ目のひと手間とは何ですか? 大西:それは温度です。肉料理でも魚料理でも、料理が美味しくならない最大の原因は、ほとんどの場合が「加熱のしすぎ」なんです。逆に加熱が足りなくても美味しくならないのですが、日本人は加熱をしなきゃいけないって根深く思い込んでいるんですよね。加熱しすぎると、肉が硬くなってパサパサになり、味も失われてしまうんです。水分と共にうま味まで抜けてしまうんですよ。 もちろん料理には「十分な加熱」が必要なのですが、その認識に齟齬(そご)があるんですよね。厚生労働省が指導している「食肉の十分な加熱」とは、素材の中心温度が75℃で1分、もしくは63℃で30分と同等の加熱をすることであって、100℃にすることではないのです。

おすすめは「塩茹で焼き」

――それは知らなかったです。加熱しすぎないようにするには、どうしたらいいですか? 大西:ベストは温度計で中心温度を測ることですね。コントロールしやすいですし、それだけで料理の味が大きく変わりますよ。 ――温度計を買わなくちゃダメですか? もっと簡単な方法はありませんか? 大西:もっと手軽な方法はあります。それは焼くのではなく、茹(ゆ)でてしまうんです。最初に肉を茹でてしまう方が楽ですよ。特に十分な加熱が不可欠な豚肉の場合は、火入れが難しいので、私は「塩茹で焼き」の手法をよく使います。肉全体にたっぷりの塩をすり込んでから茹でれば、臭みが抜けて、肉を柔らかくする効果もあります。沸騰した塩水で肉の中心がピンクがかった白色になる(中心温度70℃くらい)まで茹でた後で、仕上げに焼き色をつける感じですね。私はホイコーローとかトンテキを作る時も「塩茹で焼き」をしています。
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料理の学校に通ったことがない
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1980年東京生まれ。毎日新聞「キャンパる」学生記者、化学工業日報記者などを経てフリーランス。通信社で俳優インタビューを担当するほか、ウェブメディア、週刊誌等に寄稿

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