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ナイツ塙宣之が語る、ラジオとおじさんの魅力。ベテラン漫才師は「うなぎのタレ」みたいなもの

漫才協会の師匠たちに衝撃を受けた

塙宣之――ネタの強さではなく、人としての魅力が漫才に反映されていくんですね。 塙:漫才協会に入ってすぐの頃、師匠たちの漫才を見て「ネタは大して面白くないのに何でこんなに面白いんだろう」って衝撃を受けたんですよ。それはやっぱり、その人の生き様とかすべてがネタになってるってことで、若手のネタとぜんぜん違うなと思って。  だんだん僕も歳をとってきて、45歳になったんですよ。「今からネタを作ろう」となった時に「コンビニの店員になりたいんですよ」とか、そんなのもう思わないというか(笑)。やりたいことなわけないじゃないですか。  じゃあ何がやりたいかとなったら、「自分が言いたいことを漫才にしよう」みたいなところで考えたほうが無理なく作れるなと。結局、1~2年目に作ったネタをベースに、“今の自分が演じてる”ってだけのような気がするんですよね。

「思ったことを言っちゃう」のがおじさんの魅力

塙宣之――2021年の独演会で、ナイツのお二人がトム・ブラウンのフォーマットでネタを披露していましたよね。あのおかしさは、今のお話に通じるのかなと思いました。 塙:他人のフォーマットっていう以上に、たぶん僕の人間性がより出てるというか。「そういうことやっちゃっても別にいいだろう」みたいなことが上回ってるから(笑)、楽しんでできたんだと思います。  ただ、あれを毎回やらなきゃいけないとなると、それはちょっと違うかもしれなくて。そう考えると、おじさんって「自分が思ったことを言っちゃったり、やっちゃったりする」っていうのが魅力なのかもしれないですね。  とくにSNSとかがない時代の人たちだから、あんまり気にしないで言うじゃないですか。けっこう自分の意見をバンバンぶつけることに対して、あんまり怖がらないというか。それが、おじさんの面白さの本質かもしれないですね。 <取材・文/鈴木旭 撮影/スギゾー> 【塙宣之】 芸人。1978年、千葉県生まれ。漫才協会副会長。2000年にお笑いコンビ「ナイツ」を土屋伸之と結成。2008年以降3年連続でM-1グランプリ決勝進出。THE MANZAl2011準優勝、平成25年度文化庁芸術祭大衆芸能部門優秀賞、平成28年度芸術選奨大衆芸能部門文部科学大臣新人賞、第39回浅草芸能大賞など受賞多数。著書に『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』(集英社新書)『極私的プロ野球偏愛論 野球と漫才のしあわせな関係』(ベースボール・マガジン社)『ぼやいて、聞いて。』(左右社)など Twitter:@hanawa_nobuyuki
フリーランスの編集/ライター。元バンドマン、放送作家くずれ。エンタメ全般が好き。特にお笑い芸人をリスペクトしている。個人サイト「不滅のライティング・ブルース」更新中
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静夫さんと僕

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