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スズキとマツダで分かれた明暗。原因は“海外戦略の成否”

新興国を中心に輸出を開始

 スズキが2022年9月に発売したのが、新型SUV「グランドビターラ」です。インドでは初となるエンジンと電動モーターによるハイブリッドモデルでした。価格が安く抑えられたマイルドハイブリッドモデルでさえ、価格は104万5000ルピー(1ルピー1.5円で156万7000円)から。このモデルがヒットし、発売と同時に6万件近い予約が入りました。  近年の大躍進には、インドで高付加価値モデルを販売し、それを人気車に仕立て上げたことが理由にありました。スズキはもともと、インドの自動車販売台数において高シェアを獲得していました。2018年3月期と2023年3月期の販売台数が変化していないことからわかる通り、無理やり販売台数を伸ばそうとすると価格競争に陥る危険性があります。単価へと軸足を移し、インドの市場規模での高シェア獲得へと動いていきます。 「グランドビターラ」は2023年1月から輸出を開始。南アメリカやアフリカ、中東を注力エリアに挙げています。インドに限らず、他のエリアでもヒットすれば、スズキの業績伸張に弾みがつくのは間違いありません。

アメリカのEVから撤退したマツダ

 その一方でマツダは主力エリアでのプレゼンスを高めることができません。  2023年3月期の販売台数は北米が40万7000台で、前年比7%の減少。上期の販売減を下期で補填することができませんでした。欧州は16%も減少して16万台となりました。  マツダは北米での販売台数が最も多く、依存度の高いエリアの一つになっています。しかし、アメリカにおけるマツダのシェアはわずか2%ほどで、伸ばし切ることができません。  マツダが苦戦している背景の一つに、販売代理店へのインセンティブがありました。現地の販売店がマツダ車を売ると、本部が手数料を払うというもの。販売店側からすれば、多少の値引きをしても手数料が稼げるため、安売りすることが常態化してしまいます。これは結果としてマツダブランドを毀損します。その影響が長期化しているのです。  2021年10月にEV車の「MX-30 EV」を販売しました。しかし、電動化が進むアメリカにおいても、まったくと言っていいほど売れず、早くも販売を終了しました。  マツダのような中堅自動車メーカーは、ラインナップを広げて顧客の声に幅広く応える、グローバル戦略を取りづらいという特徴があります。アメリカで電気自動車に注力するというのは、筋書きとしては悪くないように見えます。しかし、それも失敗してアメリカのEVからは撤退しました。  絶好調のスズキに対して、マツダは現在難しいかじ取りを迫られています。 <TEXT/不破聡>
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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