お金

スズキとマツダで分かれた明暗。原因は“海外戦略の成否”

低価格モデルから“高付加価値モデル”へ

 スズキは1981年にインドに現地法人を設立し、本格進出を果たしました。当時、インドは経済の自由化が動き始めたばかりの転換点を迎えていました。経済が完全に自由化されるのは1990年代に入ってからで、このころのインドは道路が舗装されているところも少なく、未だ混沌としていました。  スズキは他社に先駆けてインド攻略に踏み出したと見ることができますが、どちらかというと自動車メーカーにとって魅力的な市場とは映らなかったというのが実情でしょう。  スズキは軽自動車「フロンテ」をベースとしたインド販売の1号車「マルチ800」を送り出します。この車を20万ルピー(当時の1ルピー26円で52万円)という最安水準で販売。ヒットを飛ばします。現在でもインドで人気が根強い「アルト800」という車がありますが、価格は38万5000ルピー(1ルピー1.5円で58万円)と、低価格に設定されています。要するに品質の良い車をインドの人々が手に入れやすい価格で販売し、成功したのです。

5年前から販売単価が30万円もアップ

 しかし、2022年からその戦略が大きく変わりました。  2018年3月期のインドの販売台数は165万4000台。2023年3月期は164万5000台でした。2023年3月期は2018年3月期と比較して販売台数が減少しています。しかし、売上高は真逆になっています。2018年3月期のインドの売上高(四輪)は1兆2598億円。2023年3月期は1兆6987億円でした。34.8%増加しています。  つまり、インドでの販売単価が大幅にアップしたのです。単純に四輪の売上高から販売台数を割って単価を算出すると、2018年3月期は76万1000円。2023年3月期は103万2000円でした。30万円近く上がっているのです(為替の影響は除きます)。
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アメリカのEVから撤退したマツダ
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フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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