更新日:2023年10月19日 16:52
スポーツ

“優勝”を目指していたラグビー日本代表はなぜ勝てなかったのか。背景には2つの「厳しい条件」が

日本代表が受け入れた2つの「厳しい条件」

 では、なぜ大事な試合でそのような状態になったのか——。ここから言及するのは、本番までの前提条件である。  日本大会から体制を継続させた日本代表は、かねて厳しい条件を受け入れていた。  新型コロナウイルスの感染が広がった2020年は、代表活動が一切できなかった。同年秋に開かれた強豪国同士の大会へは、国内事情を鑑み辞退せざるを得なかった。  おかげでフランス大会前までにできたテストマッチ(代表戦)の数は、8強入りした日本大会前の31から17に激減した。  さらに痛かったのは、サンウルブズの活動休止だ。サンウルブズは2016年から国際リーグのスーパーラグビーに参加し、特に2019年までは代表本隊と首脳陣や選手を共有。強化の土台となっていたが、金銭面を表向きの理由に2020年限りでスーパーラグビーを撤退。

結果はともかく成果は残した

 理想の環境が失われるなか、今度の日本代表は、海外大会初の8強以上を期待され、かつ頂点を目指していたわけだ。  いわば、夏期講習と冬期講習しか予備校に行かずに難関校を受験する公立校の生徒に近かったわけだ。模擬試験のような腕試しの機会が限られたため、チャレンジングな若手の抜擢がしづらく選手層を広げづらかった。  その渦中にあって、計画力に定評のあるジェイミー・ジョセフHCは工夫を重ねた。2022年夏に2つのチームを同時に動かしたり、大会開催年の猛練習でフィジカリティを強化したりした。  かくして、欧州でプレーする選手の多い南半球のアルゼンチン代表と接戦を演じた。勝負どころで失点するという内容で理想とは程遠い展開ながら、試合終盤までビハインドを1桁に抑えた。結果はともかく成果は残したといえる。  現場の奮闘は確かとあり、統括する日本ラグビーフットボール協会の理事でもある藤井は「選手の身体、ウェルフェアを鑑み、リーグと話していいスケジュールを組めたら」と、次なる強化策を語った。  自身は以前から準代表クラスの選手に国際経験を積ませたいと話していて、2024年以降はその実現に本腰を入れるべきだと強調する。
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“次”に向け、動き始めた日本代表の今後は…
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1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年にラグビーライターとなり「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」「REAL SPORTS」「THE DIGEST」「Yahoo! ニュース」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。ワールドカップ期間中は現地情報をオンラインで届ける「ラグビー反省会特別編」を実施。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など
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