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JAL対ANA「フラッグシップ機材」40年競争の悲喜こもごも。サービス合戦で“消費者にメリット”も

エアバスA350の発注

 JALにおいては、次世代の明確なフラッグシップをA350と定め2013年に国内線用にA350-900を18機、国際線用にA350-1000を13機発注した。それにより、JALのボーイング787-8/9型の発注は、ANAよりも少ない52機となっている。過去に合併した日本エアシステム(JAS)の時代に、エアバスA300導入の実績はあるが、純粋なJALとしてのエアバス機導入は初めてのこととなった。  ここまでの機材発注において日系エアラインは両社ともボーイング偏重だった。JALの意識変革は、2010年に経営破綻して再生した苦い経験からもたらされたものである。機材計画では燃費効率の悪いボーイング747の退役を加速させただけでなく、ボーイング767-300Fを含めた貨物専用機全機の使用も断念したのだ。  経営のスリム化でイベントリスクに弱い貨物事業を縮小し、貨物輸送は旅客機の床下スペースだけを利用する効率化を断行した。この大きな痛みを伴う改革を経て、自社の経営に本当に必要な機材を選定し、エアバス機を導入したことになる。これは、実はこの先の将来にわたるフラッグシップ機の導入を先行できる大きな決断であったことは発注した2013年には知るよしもなかった

ANAはボーイング777-9Xを選定へ

ボーイング

ANAが発注した次期フラッグシップのボーイング777-9X(提供:ボーイング)

 ボーイング777-300ERの後継機を決める時期に、JALはエアバスA350を先行発注した。ANAは当初の予測通り、ボーイングへの信頼を揺るがすことなく、JALの1年後となる2014年に20機のボーイング777-9Xの発注を決めた。  当時は、新型コロナウイルスの脅威など知るよしもなく、2020年の羽田空港発着枠拡大でオリンピック開催もあり、ANAは国際線でJALを大きく突き放す時期だと考えていた。  しかし777-300型初期導入機は、経年となることから777-9Xの受領までの繋ぎとして777-300ERを6機追加発注しており、2019年に導入されている。この段階で、初めて機種の違うフラッグシップ競争の第3弾の幕開けとなった。  コロナ禍を経てボーイング社の新型機開発に暗雲が垂れ込める。777-9Xでは、エンジンの選択制は取らずGE9Xのみとなった。このエンジンに問題が発生した。2020年1月の初飛行後3年を経てもいまだ型式証明を取得できずにいる。  通常は初飛行から初就航までは1年強の期間で済むのにである。2023年現在、ボーイング777-9Xの引き渡しは2025年に始まると言われているが、ANAが予定通りに受領できるかと言うと、そうはならない。ANAより先に発注したエミレーツ、ルフトハンザ、エティハド、キャセイなどで200機近い数があるからだ。
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フラッグシップ導入競争
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航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。YouTube チャンネル「そらオヤジ組」のほか、ブログ「Avian Wing」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。Facebook avian.wing instagram@kitajimaavianwing

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