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「2001年に閉園したテーマパーク」豪華ホテルで話題を呼んだが、徐々に来場者は減少…志半ばで倒れた“ある男の夢”

行川アイランドと鵜原理想郷は夢半ばに終わったが…

ある意味で後藤もまた、鵜原理想郷の建設を通して、ウォルト・ディズニーがやったような彼にとっての理想的な空間を作ろうとしたのもかもしれない。その点で、鵜原理想郷もまた、一つのテーマパーク的なものだったのかもしれないと思えてくる。行川アイランドよりも前に、ここ勝浦の地でテーマパークを作ろうとした男がいたのである。 鵜原理想郷はその後どうなったのか。一つだけ確かなのは、その開発は中途半端なところで終わってしまった、ということだ。理由の一つは、1923年に起こった関東大震災による不景気とも言われているが、後藤の支援者が死去することなどもあり、複合的にさまざまな要因が重なったのだろうとされている。 こうして見ると、ますます行川アイランドと鵜原理想郷を並べて語ってみたくなる。それらはどちらとも、ある一人の男の夢や理想を体現するものとして作られた、あるいは作られようとしたが、どちらも夢半ばにして倒れてしまった。それは、個人の情熱で始まるテーマパークを完成させたり、あるいは維持させたりするということの難しさが現れている。 テーマパークという理想郷を作ろうとした男たちの夢と、その挫折の跡が、この勝浦の地には刻まれている。現在では、真夏でも比較的涼しい避暑地として勝浦が再注目されているが、またこの地に理想郷を作ろうとする人間が現れるのだろうか。 <TEXT/谷頭和希>
ライター・作家。チェーンストアやテーマパークをテーマにした原稿を数多く執筆。一見平板に見える現代の都市空間について、独自の切り口で語る。「東洋経済オンライン」などで執筆中、文芸誌などにも多く寄稿をおこなう。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)
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