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「2DKに50袋分のゴミの山」亡くなった1人暮らしの毒親、45歳息子が語る後始末

親の考えを変えるのはムリゲー

 親の死はいきなり訪れる。親の「大丈夫」はあてにならない。いずれ迎える親の死に準備できることはあるだろうか。 「準備したところで役に立ったのか?と思います。親がその気にならないと何も始まらない。親の考えを変えるのはムリゲーです。できることはなかったと思う。元気な時は使うから、体調が悪くなったらダルくて面倒くさいからと、工具も捨てなかっただろうと思います。人に迷惑をかけている意識も薄かった。僕たち兄弟は見守りに行っていましたが、今考えると、宅食・配食サービスに代替えしておけばよかったと思います」  高齢者の見守り便利グッズで重宝されるのは、IoTによるものだ。IoTには対象物の動きや変化を検知して何らかのアクションを起こすものがある。IoTセンサーを冷蔵庫など日常的に使う家電に設置し、間接的に見守る手もある。だけど、往々にして、まだ元気なうちは、親はセンサーの設置などを嫌いがちだ。 「こんなことを言うとお叱りを受けてしまうかもしれないけれど、今思えば、勝手につけちゃえばよかったと思います。往復3時間の道のりを節約できたわけですから」  ただ、お父さんが亡くなる前に「高圧洗浄機をいらないか」と言ってきたことがあった。「お金を出して買ったものをただ捨てるのには抵抗があったようですが、欲しいと言うと、とても嬉しそうでした。もらうと言って、処分するのはひとつの手だと思いました」とWさんは振り返る。

親孝行は一切考えなくていい

Wさん

「僕たち世代に親孝行しろというのはナンセンス」とWさん

 これから親の介護に直面したり、もうすでに直面している40~50代の「SPA!」世代に伝えたいことを聞いてみた。 「親との関係性がよくない方は、コミュニケーションを取ってみて欲しい。親が聞かないなら、そこから先は、事務的に対応する。できる範囲のことだけやる。親孝行は一切考えなくていいと思います。親孝行って、いい加減、古い考えだと思います。だって、親世代も親孝行をしていないじゃないですか。親の親の世代の人たちは、長期入院で亡くなることが多かった。そういう世代の人が、僕たち世代に親孝行しろというのはナンセンスですよね。周りの目を気にしない、親孝行しないとダメと言う人とは距離を取りましょう。それよりも子どもが幸せになるのが一番の親孝行だと思います」  1人暮らしの家にしては多すぎる荷物。それが、自分が生きてきた証なのか、壊れた家庭への未練や執着だったのか。それは亡くなった父のみぞ知る。 <TEXT/田口ゆう>
立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1
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