更新日:2024年02月14日 10:32
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SNSで大バズりしたマンガ「あした死のうと思ってたのに」。著者が語る、作品に込めた思い

「あした死のうと思って……」 こんなドキッとする一言から始まるマンガがX(当時Twitter)でバズったのは2023年6月のこと。暗い話かと思いきや、押し付けがましくない優しさに満ちたその作品は瞬く間に大きな反響を呼び、公開した初回の投稿のインプレッションは1770万を超え、3万1000RT、14.3万いいねを記録するに至った。 作者は吉本ユータヌキさん(@horahareta13)。「あした死のうと思ってたのに」を表題作として描き下ろしを含む短編集『あした死のうと思ってたのに』を上梓した彼に、「優しいマンガ」の原点を聞いてみた。

いじめや家庭のことで11階のベランダの柵に足をかけた日

あした死のうと思ってたのに――『あした死のうと思ってたのに』のあとがきや、過去のインタビューにもあるように、収録された作品のほとんどがご自身の経験に基づいてらっしゃるそうですが……。 吉本:はい。中学校時代に同級生からいじめられたのがキッカケで、学校での人付き合いが苦手になって、高校に入ってからも友達ができずだったり、家では両親が不仲だったりで、学校でも家でも「そこにいる」ことの苦しさを強く感じるようになり、そんな毎日から逃れたくて、17歳の時に住んでいた住宅の11階のベランダの柵に足をかけたことがあります。飛び降りるのがこわくてやめたんですけど。 成長して大人になった今は、苦しくなっても誰かに相談してみようとか、生きる場所を変えてみようって選択肢が浮かぶんですけど、当時は「死にたい」というより「こうするしかない」と思っていました。人に自分の弱さを見せることは情けないことだったり、恥ずかしいと思ったりして、暗い気持ちは自分でどうにかするしかないと思っていて、どうにもできないのなら「こうするしかない」って、考えても考えてもそこにしか辿り着きませんでした。

バイト先の先輩が教えてくれたパンクロックが救ってくれた

――どんな経験でそれを乗り越えられたのでしょうか? 吉本:結局、飛び降りることができなくて、我慢しながら生きてる中で、バイトだけは唯一楽しい時間だったんです。歳上の人ばっかりでなにを言っても可愛がってもらえる場所だったので。そんなバイトの先輩の1人が「これかっこいいから聴いてみ」って、インディーズバンドのCDを貸してくれたんです。 それがパンクロックというジャンルで、テレビやラジオで聴くようなJ-POPとは違って、圧や勢いのある音楽に最初は圧倒されたんですけど、よく聴いてみると歌詞はすごく真っ直ぐに背中を押してくれるもので、心を鷲掴みされたんです。 それからはインディーズのパンクロックバンドともっと沢山出会いたいと思って、週末にタワレコに行って毎回10枚ぐらい買い漁って、家でも学校の登下校中もずっとMDウォークマンで聴いていました。音楽に夢中になって毎日を過ごすようになって、苦しさよりも音楽を聴く楽しさが大きくなっていき、いつからか飛び降りたいと思うことはなくなっていました。
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あした死のうと思ってたのに

X(旧称Twitter)で1770万PV、3万1000RT、14.3万いいねと話題沸騰!

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