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「男たるもの、弱音を吐くんじゃない」同じ男性からも責められ…逃げ場のない“弱者男性”の悲鳴

「僕たち男性が苦労して女性を養おうとしているのに…」

弱者男性パンデミック

イラスト/サレンダー橋本

 池田さんをはじめ、女性差別的な投稿をする弱者男性は、自分たちが差別をしているとは思っていない。むしろ「女性から攻撃されたから、反撃をしているだけだ」と認識している。では、なぜわざわざネットの煩わしい女性たちと喧嘩をするのか。その背景には、男性差別を是正したいという正義感があるという。 「だって、僕たち男性がこれだけ日々苦労してキツい仕事をして、女性を養おうとしているのにですよ。フェミがアニメの女のコを性的搾取だとか、メチャクチャ言ってくるじゃないですか。実際の女性へ暴力を振るっているのはアルファ(強者男性)なのに、僕らが弱者だから叩いていいと思っているんです」  補足すると、フェミニズムそのものは、決してアニメの美少女を叩くための団体ではない。男性社会における女性の権利獲得に始まり、さまざまな性差別と闘ってきた。  だが、日本のフェミニストの中には、アニメイラストを性的に女性を搾取しているとして叩く人間が一定数いるのも事実だ。日本を代表するフェミニストである上野千鶴子氏も、かつて、リアルな女性とのコミュニケーションが面倒だとして二次元にハマる男性に対して「ギャルゲーでヌキながら、性犯罪を犯さずに、平和に滅びていってくれればいい」と書いて物議を醸した。  こういった言説は、ときに二次元女性との結婚や、添い遂げることを考えるオタクにとっては冒涜でしかない。女性の人権は擁護するくせに、二次元に救いを求める弱者は叩くのかという批判はまっとうなものである。

同じ男性からも責められる弱者男性

 とはいえ、弱者男性の大半は、女性ではなく自分を責める。その背景には「他責にするなんて、男らしくない」といった、旧来の価値観があると言えるだろう。実際、別の弱者男性は「ネットで女叩きをしているアカウントを見ると、情けないって思っちゃうんですよね」と語った。“同じ男として”ダサいと感じてしまうのだという。同様に、今の貧困を政府や社会のせいにしている男性を見ると、イライラしてしまうらしい。 「昔から刷り込まれているんでしょうね。男がグダグダ言い訳するんじゃないって。だから、ああいう(弱者男性になった理由を他責にしている)アカウントを見ると、ムッカーってきちゃうんですよ。お前、そんな減らず口を叩いている暇があったら、1時間でも多く働けよと」  女性差別的な発言をする弱者男性は、女性からは攻撃されていると思い、自己責任で弱者になったと考える男性からはダサいとなじられ、強者男性からは存在を認識すらされていないかもしれない。男性のなかでも“最弱”の立場にあると言えるだろう。
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他責とボヤキ。弱者男性にもガス抜きが必要
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ライター、経営者。主にキャリアや恋愛について執筆。5000人以上の悩み相談を聞き、弱者男性に関しても記事を寄稿。著書に『弱者男性1500万人時代』(扶桑社新書)『ハピネスエンディング株式会社』(小学館)。X:@10anj10

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データで読み解く“弱者男性国家”ニッポンの現在


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