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「いつもLINEをブロックされて…」上場企業勤務で“年収1000万超”の30歳男性が結婚できない理由

 経済面や健康上の問題を抱えるなどして、社会の網からこぼれ落ちた人々を指す「弱者男性」という言葉。それとは一見相反する年収1000万円の男性。“勝ち組”の一つの基準でもあるが、そんな武器をもってしても、婚活ではブロックされまくり。女性から受け入れてもらえない“ハイスペ弱者”の実態とは?

なぜ上場企業勤務のエリートが弱者になるのか

弱者男性パンデミック

写真はイメージです

 30歳、年収1000万円超え、プライム市場上場企業に勤めるエリート。それがサライさん(ハンドルネーム)だ。キラキラした経歴とは裏腹に、サライさんは「弱者男性」でもある。こう書くと“そんな弱者男性がいてたまるか”という読者の声が聞こえてきそうだ。しかし、いわゆるエリート層にも、弱者男性は存在する。それを明らかにしてくれたのが、サライさんだった。 「私は大阪の高専を卒業しました。それから新潟の国立大を卒業し、現在はITエンジニアとして働いています。もともと博士を目指していたのですが、ラボで深夜3時まで研究する暮らしを続けたら、心身を壊してしまって。休みの日も全く眠れなくなってしまったんです。それで博士進学を諦め、就職したかたちです」  しかし、さすがというべきか。彼は休んでいる間も英語やプログラミングの難関資格を取得した。そして、研究室のコネがもらえないハンディを抱えつつも、財閥系のメーカーに内定する。研究で挫折したとはいえ、大逆転を果たしたと言えるだろう。SIerからコンサルティングまで幅広い経験を積みたいと期待して入社したが、縦割り社会で思ったよりジョブローテーションを期待できない。そこで、現在の職場へ転職し、ソフトウェア開発を担当している。  ところが、サライさんには彼女がいたことがない。結婚相談所に登録しているが、苦戦が続いている。

ルックスへのコンプレックスと障害を持つ家族の存在

「理由は2つあって、ひとつは顔。もうひとつが家族です」  サライさんは清潔感にあふれる男性である。ジャストサイズのジャケットに、新品のTシャツ。まさに爽やかなITベンチャーの社員を思わせる。強いて言うなら、天然パーマと、少しぽっちゃりした体形が婚活でネックになるくらいだろうか。だが、この取材をしている筆者は80kgを超えている。サライさんへ何を言う資格があろう。 「中学くらいから、自分は顔面弱者だと思っています。もともとぽっちゃりなんですけど、あだ名が『大福』だったんですよ。それがコンプレックスで。明るく流したかったから、イジられても『何が大福だよ!』って笑って言い返していましたけれども、傷ついてはいましたね」  外見の悩みを相談できる相手はいなかった。というのも、サライさんの家族は、全員が何らかの問題を抱えていたからだ。 「弟がいるんですが、双極性障害のI型で。躁状態のときは全く寝ないでおしゃべりを続けたり、けんかをふっかけてしまったりする。それで学校にも行けていなくて、現在も実家にいます。さらに、父は若年性認知症で、要介護になっています」  家族に要介護の方がいると、婚活では忌避されやすい。女性は「私が介護を担当させられるのではないか」と警戒するからだ。 「結婚相談所で、いいなと思う女性と何回かデートを重ねても、家族の事情を話すとお断りされてしまいますね。解散してすぐ、LINEをブロックされてしまう。未読のままのメッセージを見て、またダメだった……と、落ち込むのを繰り返しています」
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母親の入信する新興宗教が追い打ちに
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ライター、経営者。主にキャリアや恋愛について執筆。5000人以上の悩み相談を聞き、弱者男性に関しても記事を寄稿。著書に『弱者男性1500万人時代』(扶桑社新書)『ハピネスエンディング株式会社』(小学館)。X:@10anj10

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