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ケンタッキーは“高い”「クリスマス以外は買わない」という時代も…一時の不調からV字回復するまで

突破口になった「お得なセットメニュー」

停滞が続くなか2018/3期のチェーン売上高は1,132億円と前年比で16億円減少し、KFC事業は前年の営業利益15億円から5億円の赤字へと転落しました。クリスマスなど特別な日の利用が多かったものの、日常ではあまり寄らないという人も多く、引き続き高さがネックとなっていたようです。 2000年代に増えた安いコンビニチキンの存在もKFCを脅かしていました。業績悪化を機にKFCは方針を変え、日常利用を促進する施策を打ち出します。18年7月から当時500円の「ケンタランチ」を発売し、数多くの利用者が見込まれるお昼に集客を図りました。 お得感を認識したランチ客が普段の日でも寄るようになる事を狙っていたようです。ちなみに現在でもランチセットは最大140円程度お得になるよう設定されています。 実際にお得なセットメニューは“ついで買い”やリピート客の増加につながり、停滞していた売上高は伸びました。18/3期から20/3期のチェーン売上高は1,132億円→1,181億円→1,287億円と急成長をとげ、全社売上高も735億円→743億円→796億円と伸び続けました。ちなみに全社売上高の方が低くなるのはFC比率が74%のためです。

好調は続く。成長の勢いは止まらず

コロナ禍以降もKFCは好調が続いています。2020/3期から2023/3期の業績は次の通りです。 【日本KFCホールディングス株式会社(2020/3期~2023/3期)】 売上高:796億円→897億円→975億円→999億円 営業利益:47.9億円→63.5億円→61.1億円→36.2億円 期末店舗数:1133店舗→1138店舗→1172店舗→1197店舗 コロナ禍での好調はファストフードチェーンに共通しており、行きやすい郊外店という立地や中食需要の拡大に伴うテイクアウト需要の伸びが業績を牽引しました。また、近年では年間200店舗前後の新規改装を進めており、地道なリニューアルも集客に繋がったと考えられます。 そして今期2024年3月期も好調が続いて1,200店舗を突破、売上高は初の1,000億円越えとなる1,055億円を予想しています。「オリジナルチキン」1ピースの値段が200円台を超えて310円となるなど、原材料費の上昇が続く近年は値上げが避けられませんでした。しかし、値上げしつつも客数は減らなかったようで、外食事業全体の好調もあり今期は好調が続いています。
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今後は居酒屋業態の展開も
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経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_

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